新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの期間は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する感染防御対策が、2次的にインフルエンザウイルス感染症も抑制しました。しかしながら、現在では、オミクロン株のバリアントの流行は続いているとは言え、COVID-19に対する緊急性が無くなり防御対策が緩和した結果、インフルエンザウイルスの感染も起きるようになりました。しばらくの間、インフルエンザに罹患しなかったことによりインフルエンザウイルスに対する免疫力は低下しているため、SARS-CoV-2とインフルエンザウイルスのいずれに対してもワクチン接種が推奨されます。実際、以前に、初期のSARS-CoV-2 1価ワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種における有効性・安全性(接種間隔などを含めて)に関して特に問題はないことが報告されていたのですが、現在のオミクロンバリアント全盛期におけるSARS-CoV-2 2価ワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種に関する報告はありません。このような状況で、イスラエルSheba Medical Center*2のTal Gonen博士らは、SARS-CoV-2 2価ワクチンのブースター接種とインフルエンザワクチンの同時接種の有効性を調査したコホート研究を行った結果(図1)、SARS-CoV-2ワクチン単独接種群と比較して、SARS-CoV-2ワクチン・インフルエンザワクチンの同時接種群では免疫原性*3、及び、反応原生*4に統計学的な有意差はなかったことをJAMA Network Open誌に報告しました(文献1)ので、それを紹介致します。
文献1.
Immunogenicity and Reactogenicity of Coadministration of COVID-19 and Influenza Vaccines.
Tal Gonen et al.,JAMA network open. 2023 Sep 05;6(9);e2332813. pii: e2332813.
SARS-CoV-2ワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種は、単独で接種した場合と比較して有効性・安全性に関する問題はないことが報告されているが、それらは、初期のSARS-CoV-2に対するワクチン(1価ワクチン)を評価したものである。そこで著者らは、オミクロンBA.4/5変異株対応2価ワクチンのブースター接種とインフルエンザワクチンの同時接種における反応原性及び免疫原性を比較するためにアンケートを使った前向きコホート研究を行った。
本研究結果より、SARS-CoV-2ワクチンの単独接種と比較して、SARS-CoV-2+インフルワクチン同時接種は免疫反応の低下や有害事象の頻発とは関連しておらず、これらのワクチンの同時接種を支持するものである。