VEXAS 症候群は、X染色体上に位置するUBA1遺伝子に体細胞変異を有する優勢な造血クローンによって引き起こされる、大球性貧血、再発性多軟骨炎、血管炎、骨髄異形成症候群などの、多彩な炎症性病態を呈する、主に成人以降の男性で発症する自己炎症性疾患です。VEXAS 症候群は、比較的、最近(2020年)に同定されたので、まだ、治療方法が確立されていません。そこで、治療のガイドラインにする目的でシステマティックレビュー•メタ解析が行われた結果、抗白血病薬のアザシチジン、抗炎症薬のJAK阻害剤やIL-6阻害剤などが実行可能な選択肢であると推定されました(「VEXAS症候群の治療に関するシステマティックレビュー•メタ解析」 2025年6月26日参照")。しかしながら、根本治療を確立するためには、原因となる病態メカニズムに基づいた治療法を開発することが必要です。VEXAS症候群において、造血性クローンが優勢になるメカニズムをどう理解すれば良いのでしょうか? これに対して、イタリア・ミラノにあるサン・ラファエレ大学のMolteni, R博士らは、VEXAS症候群の男性患者さんの骨髄液解析のコホート研究において、HSPCsは、おそらく老化様状態になり、炎症性環境に対してより耐性を獲得しますが、その一方で、VEXAS変異型クローンによって圧倒された野生型の細胞は徐々に消耗し、機能的造血が全体的に損なわれ、骨髄機能不全につながる可能性を示しました(図1)。今回は、最近のNature Medicineに掲載された論文(文献1)を紹介医たします。これらの結果が、将来的に、治療に結びつくことが期待されます。
文献1.
Mechanisms of hematopoietic clonal dominance in VEXAS syndrome. Molteni, R., Fiumara, M., Campochiaro, C. et al. Nat Med 31, 1911-1924 (2025).
VEXAS 症候群は、最近、発見された成人以降に発症する自己炎症性疾患であり、UBA1遺伝子に体細胞変異を有する優勢な造血クローンによって引き起こされると考えられているが、造血性クローン優勢のメカニズムは明らかでない。さらに、VEXAS 症候群のモデルの欠如は根治療法開発の妨げとなる。これらの問題点を克服することが本研究の目的である。
本研究では、VEXAS症候群の男性患者さん9人(健常者〜4人)を観察し、造血*2、及び、シングルセルトランスクリプトーム解析*3により、免疫形質の評価を行った。その結果、すべての系統の血球細胞に炎症が蔓延していた。
本研究の結果は、VEXAS症候群において、造血性クローンが優勢になるメカニズムを示唆しており、今後の治療戦略を得るための前臨床試験や予備的な洞察を得るためのモデルを提供する。