日々の食生活は、そのアンバランスが生活習慣病の原因になりますが、逆に、適切な食品を摂取することは、疾患の予防効果があるなど、食事環境の重要性が認識されるようになりました。後者に関連して、最近、アロエの持つ種々の病気に対する効能が注目されています。実際、アロエの葉に含まれるA-Eは、細胞や動物モデルにおいて、抗菌作用や抗炎症作用を持ち、また、がん細胞の増殖を抑制し、アポトーシスを誘導することが報告されており、感染症、2型糖尿病、がんなど様々な疾患の治療の基礎を築く可能性が考えられています。また、最近、お伝えしていますように、ADやパーキンソン病(PD)などの神経変性疾患の治療は、早期治療、特に、予防治療が不可欠であることが明らかになってきました。注目すべきことに、以前より、A-Eの蛋白凝集抑制効果*4が報告されていることから(図1)、A-Eは、また、ADやPDなどの神経変性疾患の早期治療に有効かも知れないと考えられます。今回、中国・安徽中医薬大学のYulu Wang博士らは、マウスのADモデルにおいて、A-Eを経胃的に投与したマウスはコントロールに比べてマイトファジーが促進して、認知症状が改善していることを観察しました。また、ADの細胞モデルにおいては、A-Eによるミトファジー促進にAMPK、PGC‐1α、SIRT3*5などの分子が関係していることを明らかにしました。これらの結果は、A-EのADの予防治療に対する有効性に一致するものであり、CNS Neurosci Therに掲載されました(文献1)ので紹介致します。蛋白凝集、炎症に加え、ミトファジー不全がADだけではなく、PD、ハンチントン病や筋萎縮性側索硬化症など他の神経変性疾患に共通した病理学的特徴であることを考慮すれば、A-Eが一般的な神経変性疾患の予防治療に使える可能性もあり、非常に興味深いと思われます。
文献1.
Yulu Wang et al. Aloe‐Emodin Improves Mitophagy in Alzheimer's Disease via Activating the AMPK/PGC‐1α/SIRT3 Signaling Pathway, CNS Neurosci Ther 2025;31:e70346.
ADの早期治療に対するA-Eの有効性が想定されるがそのメカニズムは不明である。本プロジェクトは、A-EがADの病態におけるマイトファジーの機能不全を改善することに神経細胞のダメージ和らげ、認知機能を改善させる可能性を持つことをADのモデルで証明する。
本研究の結果は、A-EがAMPK、PGC‐1α、SIRT3の経路を通してマイトファジーを活性化し、海馬神経のダメージを減少させ、ADの認知機能低下を軽減することを示唆している。