前回、お伝えしましたように(「アロエ食による神経変性疾患の予防効果」2025年8月14日参照)、アロエは、アルツハイマー病(AD)などの神経変性疾患を含む種々の疾患、特に、高齢疾患の予防治療に使える可能性が認識されるようになりました(図1)。今週は、アロエ-エモジン(A-E)による腎線維症の治癒効果を述べた論文を取り上げます。腎線維症#1は慢性に経過するすべての腎臓病である慢性腎臓病(CKD)*4 の進行に伴って生じます。あまり耳にしないかもしれませんが、実はCKDの患者さんは、国内に約2,000万人(成人5人に1人)いると推計され、頻度から見ると ADのそれとほぼ同程度であり、新たな国民病ともいわれています。CKDでは、腎臓の炎症と線維化によりさまざまな細胞変化が引き起こされ、腎臓の構造に不可逆的な変化をもたらすと考えられます。CKDが進行すると、腎線維症は憎悪し、炎症と線維化は腎臓において細胞増殖、血管・組織内の圧力上昇を引き起こし、瘢痕が形成されます。そして最終的に腎臓の濾過機能を低下させ、腎不全に至るので、血液透析、腹膜透析、腎移植のいずれかが行われます。腎線維症に対する根本的な治療法は存在しないため、腎線維症の早期・予防治療は重要です。今回、腎線維症に対するアロエの効果を検討するために、中国・黒竜江中医薬大学のMing Chen博士らは、マウスの腎線維症モデルにおいて、A-Eを投与したところ、マウスはコントロールに比べて腎機能の低下が緩和していることを観察しました。さらに、腎線維症の細胞モデルにおいては、A-Eによる腎機能低下の緩和作用にPI3K/Akt/GSK3βのシグナル伝達経路が関与していることを明らかにしました。これらは、A-Eの腎線維症の予防治療に対する有効性に一致する結果であり、興味深いと思われます。最近のEuropean Journal of Histochemistryに掲載されました(文献1)ので紹介致します。
文献1.
Ming Chen et al. Aloe-emodin ameliorates chronic kidney disease fibrosis by inhibiting PI3K-mediated signaling pathway, European Journal of Histochemistry 2025; volume 69:4228
CKDは世界中に多く存在するが、腎線維症などの病態が進行すると、最終的に腎不全に至る。現時点における腎線維症に対する治療法は確定していない。したがって、腎線維症の治療にアロエなどに含まれる天然化合物であるA-Eの有効性を検討するのが本プロジェクトの研究目的である。
この目的のために、腎線維症動物モデルであるアデニン誘発慢性腎不全モデル、また、腎線維症細胞モデルであるTGFβ-1で刺激した腎小管上皮細胞HK-2に対するA-Eの効果を解析した。
本研究の結果は、PI3K/Akt/GSK3βシグナル経路がCKDに伴う腎線維症の治療標的であり、A-Eは、この条件を満たすことで、新しい治療法になる可能性がある。