
OCは、女性の罹患するがんの中で、8番目に頻度の高いがんであり、〜2.5%の女性がOCに罹患する可能性があります。OCの罹患率は、40歳代から増加し、50~60歳代がピークですが、OCの死亡率は、50歳以降増加して高齢になるほど高くなり、がん死の原因として3.5〜4.0%と見積もられています。OCの治療は、外科手術、抗がん剤、放射線療法などの標準治療が中心であり、最近では、免疫療法も行われていますが(図1)、これらだけでは太刀打ちできない、悪性度の高いがんや進行がんなどをはじめとした卵巣腫瘍が多いこともまた事実です。この意味でも、食事療法などの新たな治療法を開発する必要があります(図1)。興味深いことに、環境の影響を調査した報告書では、米国生まれの日系女性は日本生まれの日本人女性と比較して卵巣がんの発生率は高く、また、食生活では肉や乳製品といった動物性脂肪の摂取が多かったことから、食事の欧米化による食事中の脂肪酸の摂取は、OCの増加の一因と考えられます。しかしながら、これまで、脂肪および脂肪酸の摂取およびOCの生存率に関するエビデンスは限定的でした。このような状況で、中国・瀋陽中国医科大学のWei, Y.F. 博士らは、食事中の脂肪および脂肪酸の摂取がOCの発生・増殖に影響する可能性を調べるための前向きコホート研究:OOPSを行い、703人のOC患者さんから収集されたデータを分析しました。その結果、予想通り、総脂肪酸の摂取量の増加と、OC患者さんの全死因死亡率の増加との関連が明らかになりました。将来的には、OCの治療において、脂肪酸をターゲットにした食事療法の開発に役立つことが期待されます(図1)。この研究成果は、Nutrition Journal誌に掲載されました(文献1)ので、今回はこの論文を報告いたします。
文献1.
Wei, YF., Xu, YL., Li, YZ. et al. The association of dietary fat and fatty acid intake with ovarian cancer survival: findings from the OOPS, a prospective cohort study. Nutr J 24, 70 (2025).
食事中の脂肪および脂肪酸の摂取は、いくつかのがんの発症に影響を与えることが知られている。しかしながら、脂肪および脂肪酸の摂取とOCの生存率の関係に関する報告はほとんどない。本プロジェクトでは、これを明らかにすることを研究目的とした。
この目的のために、703人のOC患者さんから収集されたデータを分析した前向きコホート研究OOPSを行った。食事摂取量は、確認された食事頻度に関するアンケートから得られ、コックスの比例ハザードモデル*3を用いて解析し、関連評価を行った。さらに、いくつかのサブグループおよび感度分析*4も実施された。死亡は、医療記録、および、積極的なフォローアップによって確認された。