
高齢期の神経変性疾患は遺伝因子と環境因子が相互に関係し合って発症すると考えられていますが、中でも、孤発性のPDにおいては、多くの環境因子が明らかにされて来ました(図1)。最も研究されてきた危険因子として、農薬・殺虫剤があります。扱う農薬や殺虫剤の量が多く、期間が長いほど、PDを発症する割合が高くなります。他にPDの原因になる環境因子として、金属が知られています。鉄、銅、鉛を扱う工場などで働いている方で、PDの発症する割合が高くなります。また、慢性的な外傷を受けたボクサーが引退後にPDを発症することもよく知られています。他方で、PDの発症や進行に対して予防的に働く因子も研究されて来ました(図1)。喫煙がPDの発症をおさえることから、ニコチンなどをPDの予防や改善に応用する研究に期待が持たれています。また、PDの予防因子として、他にカフェインがあり、コーヒーを飲む人の方がPDの発症が明らかに少ないことが報告されています。今回、東海大学・医学部の中澤祥子博士、深井航太博士らは、PDと職業の関連性について検討するために、ICOD-Rをもとにした症例対照研究を行ないました。その結果、医師、歯科医師、獣医師、薬剤師などのホワイトカラーは、他のサービスワーカー、ブルーカラーに比べて、PDのリスクが高いことがわかりました。以前より、真面目で几帳面な性格はPDの危険因子として知られており、これらの職業の人にPDが多いのは、ドーパミンの分泌量が低いことに関係しているのではないかと考えられますが、現時点では、明らかでありません。これらの結果は、BMJ Open誌に掲載されましたので、今回は、この論文(文献1)を報告いたします。
文献1.
Shoko Nakazawa, Kota Fukai, Yuko Furuya, et al. Occupational risk of Parkinson’s disease and employment status following hospital admission: secondary analysis of ICOD-R case–control data in Japan, BMJ Open 2025 Dec 23;15(12): e107012.
職業とPDリスクとの関連性は明らかではない。本研究は、大規模なサンプルを使って解析し、これを明らかにすること、および、PD患者が発症後に職業を変えたかどうかを調べることを目的にした。
サービス業界およびホワイトカラー業界、特に医療分野の専門家は、PDのリスクが高かった。診断後、約20%が失業した。