
ASDは、特定の興味・行動に対して強いこだわりがあり、コミュニケーションや対人関係を苦手とする発達障害の一種です。先天性の脳機能の障害や胎内での環境の影響が関係しているのではないかと考えられていますが、現時点で、原因は明らかになっていません。興味深いことに、ASDは、多くの疾患と併存することが知られています(図1)。また、ASDは持続性で、ASDの患者さんは、高齢期になると認知機能が低下し、アルツハイマー病(AD)を含む認知症全般のリスクが高くなることが指摘されています(アルツハイマー病と自閉スペクトラム症の病態メカニズムの共通性〈2025/2/14掲載〉)。したがって、自閉症と認知症の関連性を明らかにするさらなる研究が必要ですが、高齢のASDサンプルが十分で無いこともあり、現時点では、ゲノムワイド関連解析による結論は出ていません。このような状況で、スウェーデン・カロリンスカ研究所*2のZheng Chang博士、及び、共同研究者は、ASDと認知症の関連性が、遺伝的要因などの家族的因子に起因するかどうかを決定するため、スウェーデンの全体の家族調査を実施しました。この大規模調査の結果、ASD患者さんの親族、特に両親において認知症リスクが高まることがわかったことから、ASDと認知症の両疾患に共通する遺伝的要因の可能性が示唆されました。これらの結果は、Molecular Psychiatry誌に掲載されましたので、今回は、この論文(文献1)を報告いたします。以前にもお伝えしましたように(アルツハイマー病と自閉スペクトラム症の病態メカニズムの共通性〈2025/2/14掲載〉)、ASDは、統合失調症や鬱病など精神疾患のリスクが増加し、また、精神疾患はADのリスクを増加させることから、これらの疾患に共通するメカニズムの一層の理解が治療に結びつくことが期待されます。
文献1.
Zheng Chang, et al. Association between autism and dementia across generations: evidence from a family study of the Swedish population. Mol Psychiatry 30, 4605–4612 (2025)
ASDの患者さんが認知機能の低下や認知症のリスクが高くなることを示唆する新たな証拠がある。この関連性がASDと認知症の間に共有された家族的影響によるものかどうかは不明である。したがって、本研究の主な目的は、ASDの患者さんの親族における認知症のリスクを調査することであった。
スウェーデンの登録簿にリンクさせた家族調査を実施した。1980〜2013年にスウェーデン国内で生まれた個人を特定し、2020年までフォローアップを行い、これらの個人におけるASDの臨床的診断を特定した。ASD患者さんと両親、祖父母、叔父/叔母を結びつけた。ASD個人の親族における認知症(AD、その他のあらゆる種類の認知症を含む)のリスクは、コックスの比例ハザードモデル*3を用いて推定した。その後、親族の性別およびASD患者の知的障害の有無で層別化し、解析を行った。
これらの結果は、ASDと異なる種類の認知症は、家族内で共存しており、遺伝的関連の可能性を示唆していた。今後の研究では、ASDの個人における認知症のリスクを明らかにする必要がある。