
PCOSは卵巣内での男性ホルモンの分泌量が増加することが原因で、月経不順、不妊症になり、主として、クロミフェン療法*4などの薬物療法が行われていますが、加えて、男性ホルモンの影響により毛深くなり、ニキビができ、肥満や血糖値上昇などの多くの症状を伴います。また、PCOSの患者さんは、不安やうつなどの症状を伴うことが知られています(図1)。これらの精神症状に対する明確な治療法はないので、現在、いろいろな治療法開発が試みられていますが、中でも注目されているのが鍼治療です。鍼治療は、2000年以上前に中国で誕生し、我が国には、6世紀の初頭に渡来して、現在では、東洋医学あるいは漢方医学の一分野になり、鍼灸医療として民間医療としても普及しました。鍼灸治療は、1. 自律神経刺激、2.血流改善、3. 免疫力増強、4.痛み抑制、5.心地よさなどのメカニズムにより(図1)、非常に多くの疾患に有効とされています。実際、世界保健機関(WHO)も2025年の時点で、41の適応症を認めています。最近では、不安やうつなどの精神症状に対する有効性が着目されています。このような状況で、中国・四川省にあります成都中医薬大学(Chengdu University of Traditional Chinese Medicine)のRongzhen Ye博士らは、PCOSの精神症状に対する鍼治療の有効性を評価するためにシステマティックレビュー・メタ解析を行いました。その結果、鍼治療は、アンドロゲン、脂肪、および神経内分泌経路の調節を通して、PCOSにおける不安障害や抑うつを軽減することが明らかになりました。今回はFrontiers in Medicineに掲載された論文(文献1)を紹介いたします。今後、メカニズムがさらに明確にされ、ランダム化比較試験(RCT)におけるサンプル数が増えて、鍼治療が安全で効果的な補助療法になること期待されます。
文献1.
Ye R et al. (2026) Acupuncture improves anxiety and depression in patients with polycystic ovary syndrome: a systematic evaluation and meta-analysis. Front. Med. 17, 264 (2025).
最近、PCOSにおける不安や抑うつに対処するために鍼治療が利用されるようになっている。本研究の目的は、PCOSを有する女性における不安や抑うつの緩和に対する鍼治療の有効性と安全性を厳密に評価しつつ、その潜在的なメカニズムを探求することである。
2025年3月1日までの、 CNKI、Web of Science、PubMed、Embaseなど、8つのデータベース(中国語/英語)を検索した。2人の研究者が独立して研究をスクリーニングし、データを抽出し、コクラン・リスク・オブ・バイアス・ツール*5を用いて質を評価した。メタアナリシスはRevMan 5.4*6で実施された。