
最近、新型コロナウイルスのパンデミック程ではありませんが、HFMDが多くの国で流行しており、世界的な問題になっています。東京都におきましても、都内の小児科定点医療機関からの第26週(6月22~28日)におけるHFMD患者報告数が2年ぶりに都の警報基準を超え、注目されています(図1)。HFMDは、コクサッキーウイルスやエンテロウイルスなどのウイルスに感染した後、3~5日ほどの潜伏期間を経て口中、手のひら、足の裏、肘、膝、殿部に水ぶくれが現れ、微熱(〜約3割)が見られるのが特徴です。通常、数日で自然に解熱し、後遺症を残すことはありませんが、まれに、脳炎や髄膜炎などの重篤な合併症を引き起こすことがあるので要注意です。現在、HFMDに対する抗ウイルス薬が利用出来ないため、ワクチン開発などの予防対策を行う必要があります。中国では、2016年、一価不活化EV-A71ワクチン接種のキャンペーンを開始しました。これまでのところ、EV-A71ワクチン接種後における流行パターンについては不明であり、明らかにする必要があります。このような状況で、中国・広西中医薬大学(Guangxi University of Chinese Medicine)*5のHou Yet博士らは、EV-A71ワクチン接種前後でHFMDを引き起こすウイルスが変化する可能性を考えて解析したところ、EV-A71の系統は、CVA6およびCVA16に置き換わることが明らかになりました。このことは、一価不活化ワクチンよりも多価不活化ワクチンを接種する方が有効であることを示唆するものでした。これらの結果が、PLoS Oneに掲載されましたので、今回は、その論文(文献1)について報告いたします。今後、HFMDワクチン開発に役立つことが期待されます。
文献1.
Hou Yet al. (2026) Shifting epidemiological patterns and strain replacement of hand, foot, and mouth disease in southern China, 2009–2022: A longitudinal study. PLoS One 21(1): e0341302.
中国は2016年、一価不活化EV-A71ワクチンの普遍的キャンペーンを開始した。EV-A71ワクチンはCVA16などの他のウイルスによって引き起こされる感染症に対しては交差保護が提供されないと考えられるが、これまでのところ、EV-A71ワクチン接種後にHFMDを誘導する主要な病原体の流行パターンの変化については調べられていない。したがって、これを明らかにすることが本研究の目的である。