
近年、世界中で肥満症の患者数が増大していること、また、肥満症が糖尿病や心血管疾患や多くの慢性疾患の根幹となり得ること、さらに、ダイエットブームなど多くの要因が相まって、抗肥満治療薬の開発競争が激化しています。このような状況で、デンマークの大手製薬会社Novo Nordisk(ノボ・ノルディスク)は、カグリセマの開発に際して、一連の臨床試験(REDEFINE)1~5を行いました。カグリセマは、GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドと長時間作用型アミリンアナログであるカグリリンチドの配合剤で(図1)、GLP-1、アミリンの両者は、いずれも食欲抑制ホルモンとして働きますが、異なる機序で作用するため、(例えば、脳においては、GLP-1は孤束核→ 視床下部、アミリンは最後野→ 視床下部に作用する)、相加・相乗的に食欲が抑制されるのでないかと思われました。実際、小規模の第2相臨床試験では、セマグルチド単独に較べて、カグリセマは約2倍の体重減少を示し、大きな期待を集めていました。本論文で紹介するREDEFINE5:第3相臨床試験においては、東京大学の山内敏正博士らが中心となり、日本、台湾の多施設が参加して行われました。その結果、セマグルチド単独に比べて、セマグルチドとカグリンチドを併用することにより、抗肥満効果が有意に大きくなることから(図1)、カグリセマは「GLP-1+アミリンアナログ」という新しい作用機序を持つ画期的な薬剤となる可能性が示されました。これらの結果は、最近のThe Lancet Diabetes & Endocrinologyに掲載されましたので、今回は、この論文(文献1)を取り上げます。興味深いことにGLP-1はパーキンソン病や認知症の治療効果を持つ可能性が言われていることから、神経変性疾患の治療という視点からも意義深い知見であると思われます。
文献1.
Toshimasa Yamauchi al. (2026), Efficacy and safety of co-administered cagrilintide and semaglutide versus semaglutide alone in adults with overweight or obesity with or without type 2 diabetes in Japan and Taiwan (REDEFINE 5): a multicentre, randomised, active-controlled, phase 3a trial, The Lancet Diabetes & Endocrinology 14, 450-462
これまで、カグリリンチドとセマグルチドの組み合わせは、体重減少を引き起こすことが世界的に示されている。したがって、東アジアにおいて、カグリリンチド2.4mgとセマグルチド2.4mgの固定用量併用とセマグルチド2.4mgの有効性および安全性を比較して、評価することが本研究の目的である。
BMI*6 が27kg/m2以上、肥満関連の合併症が少なくとも2つ以上ある18歳以上、またはBMIが少なくとも35kg/m2以上、肥満関連の合併症が少なくとも1つ(日本肥満学会ガイドラインによる)ある患者さんが、2型糖尿病の有無にかかわらず参加した。
参加者は、週に1回、カグリリンチド・セマグルチドまたはセマグルチド(どちらも2.4mg)を皮下注射でランダムに投与され、さらに生活習慣への介入も68週間にわたり行われた。参加者や研究者などが、どの有効薬(アクティブ薬)を投与されているか分からないように隠された。
主要評価項目は、ベースラインから第68週までの体重の相対的な変化であった。ランダム化投与*7 を受け、少なくとも1回の試験用製品を投与されたすべての参加者において、安全性分析が実施された。
これらの結果は、過体重または肥満、2型糖尿病の有無にかかわらず、東アジア地域の人における体重管理におけるカグリリンチド・セマグルチドの有効性と安全性を裏付けている。