
気管支喘息は、気道が慢性的に炎症を繰り返すことで気管支が狭くなり、喘鳴(ヒューヒューといった連続した呼吸音)や呼吸困難などの発作が生じて適切な処置を行わないと命に関わることもある深刻な病気です。治療は、気管支拡張薬*3やステロイドなどの薬物療法が中心になりますが、適度な運動、禁煙、十分な睡眠など日々の生活習慣が喘息発作の予防に重要です。近年、ビタミンの欠乏が多くの疾患の発病に関係があることが明らかにされて来ましたが(図1)、目の健康にかかわるビタミンAや骨の健康を支えるビタミンDが、喘息に関しては、免疫機能の調節や炎症の抑制、組織の修復などに関わり、肺の健康を維持するうえで重要な役割を担う可能性が想定されてきました。今回、米国・ハーバード大学病院マス・ジェネラル・ブリガム*4のRink Sharm博士らは、中米コスタリカで実施されている2つの喘息コホート研究に参加した小児1165人と成人1041人、計2206人の喘息患者さんのデータを解析した結果、小児と成人のいずれにおいても、血液中のビタミンA、Dの濃度が高いほど、肺の働き(呼吸機能)が良好であることが明らかになりました。さらに、成人においては、血中ビタミンDが多い人ほど、細胞レベルで進む「肺の老化」も緩やかであるということがわかりました。これらの結果は、日頃の食生活におけるビタミンA、Dの摂取が喘息発作の予防に有効であるという新たな知見を提供するものであり、喘息の患者さんにとっては朗報です。したがって、今回は、最近の『Thorax』に掲載された論文(文献1)を報告いたします。
【文献】
Sharma R, et al., The impact of vitamins A and D on lung function and regulatory epigenetics in adult and childhood asthma. Thorax 2026 Jun 30: thorax-2025-223756.
ビタミンAおよびDは、肺の発達および免疫機能に関与する遺伝子発現の主要な調整因子であり、これまでの研究では、投与量や状況に応じて喘息および肺機能に保護効果と副作用の両方が現れると報告されている。また、DNAメチル化やmiRNA発現などのエピジェネティック*5なメカニズムにも影響を与えると言われている。これらのビタミンと喘息の関連性を確認することが本研究の目的である。
ビタミンAが、小児および成人における肺機能を守り、ビタミンDは、成人におけるエピジェネティックな老化の低下を遅らせた。