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2021/3/8

米国食品医薬品局により緊急使用許可を受けたCOVID-19新ワクチンは、組換えベクター型

文責:正井 久雄

Janssen Biotech社のCOVID-19 ワクチンがアメリカ食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration; FDA)から 緊急使用許可(emergency use authorization; EUA)を得ました。これにより米国の18歳以上の成人に対してワクチン投与が可能になりました。

Janssen社のワクチンは、米国において、新型コロナウイルスに対する非mRNA型、組換えウイルスベクター型の最初のワクチンとなります。このワクチンは、SARS-CoV-2の安定化したSpikeタンパク質(2個のプロリンを変異させるとともに、furinによる切断部位を除去したためにprefusion型に固定され安定化されている[文献参照])をコードする、複製能欠損タイプのヒトアデノウイルス26型ベクターを用います。

Janssen社によると前臨床、およびフェーズ I/IIAの臨床試験においてワクチンは強力な液性(抗体)および細胞免疫(CD4陽性およびCD8陽性T細胞)を示しました。CD8陽性T細胞応答は、大部分T ヘルパー1型(Th1)CD4陽性T細胞応答でした。中和および結合抗体は、少なくとも投与後85日間維持されたということです。

このワクチン投与により、中度から重症の症状を、投与から14日後に67%、28日後までに66%抑制しました。重症な症状に限ると、ワクチンによる抑制効果は、14日までで77%、28日では85%を超えたということです。

SARS-CoV-2の変異型が蔓延している国でも臨床テストを行っています。B.1.351型のウイルスが発見された南アフリカでは、28日後に重症の症状を82%抑制しました。P.2株が最初に検出されたブラジルでも米国と同じ程度の抑制効果が見られました。

Janssen社によると、1回の接種で十分な効果が得られるとしています。2回目の接種が必要かどうかは今後の臨床試験で得られるデータにより明らかになるであろうということです。

2/28に、U.S. Centers for Disease Control and Prevention's Advisory Committee on Immunization Practices(米国疾病管理予防センター、予防接種実施評価委員会)が安全と効果を保障したことから、この新しいワクチンの米国での接種が正式に承認さました。


Hsieh CL, Goldsmith JA, Schaub JM, DiVenere AM, Kuo HC, Javanmardi K, Le KC, Wrapp D, Lee AG, Liu Y, Chou CW, Byrne PO, Hjorth CK, Johnson NV, Ludes-Meyers J, Nguyen AW, Park J, Wang N, Amengor D, Maynard JA, Finkelstein IJ, McLellan JS. Structure-based Design of Prefusion-stabilized SARS-CoV-2 Spikes. Science. 2020 Jul 23: PMID: 32577660; PMCID: PMC7302215.