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2021/3/25

新型コロナウイルスのワクチンは妊婦にとって危険か?

文責:正井 久雄

3月17日にAmerican Dental Association(米国歯科医師会)が主催したon line講演会(下記のサイト参照)において、周産期医療の専門家でDuke大学の准教授であるGeeta Swamy博士が、妊婦の新型コロナウイルスのワクチン接種について「Oh Baby! COVID-19 Vaccine Facts on Pregnancy and Fertility(赤ちゃん!妊娠と生殖に関する新型コロナウイルスワクチンの事実)」と題した講演を行いました。

これまで、妊婦が新型コロナウイルスワクチンの接種を受けることには危険が伴うという情報や、ワクチンの臨床テストに妊婦が含まれていなかったという事実などを元に、ワクチン接種に躊躇する妊婦さんがおられました。

講演において、Swamy博士は「ワクチン接種が、妊娠、授乳、生殖能力などに悪影響を及ぼすという証拠はない」と述べました。「むしろ、妊婦はワクチン接種を受けることが重要である」と発言されています。
妊婦は、新型コロナウイルスの感染、発症に際して、重症化の可能性が一般の方より高いと言われています。また、肥満や糖尿病などが併存すると、危険性はさらに増大すると考えられます。
Swamy博士は、「妊婦は新型コロナウイルスワクチンの接種を受けても良い、ではなく、妊婦は新型コロナウイルスワクチンの接種を受けるべきと言った方が正しい」と述べました。

妊娠の際、免疫的な変化が起こり、感染症に関連する疾患に対する感受性が高まることが知られています。妊婦は、一般の方と同様に、外界の物質を免疫により認識します。そもそも、胎児のDNAの半分は母体とは異なっており、これは外的な物質であると言えます。ワクチンによる免疫は、感染による炎症応答を減弱させ、胎児の拒絶反応の可能性を下げます。
したがって、ワクチンは妊娠期間、そして終生の母体の保護、感染防御をもたらす可能性があります。

また、上に述べたように、妊婦にとって新型コロナウイルスの感染がもたらす危険性を認識する必要がありますが、妊娠することにより感染の危険性が高まるわけではないということです。

このような状況の中、米国では、5万人を超える妊婦がこれまでワクチン接種を受け、安全性に問題は検出されていません。さらにその中の3,200人が、米国疾病管理予防センター、新型コロナウイルス妊婦登録センターに登録しました。登録した妊婦は、自分の妊娠と幼児の健康に介して、妊娠期間と生後3ヶ月の間、情報を提供することになっており、今後、ワクチンが妊婦や胎児に及ぼす影響に関して、さらに多くの情報が得られると期待されます。

ワクチンの作用機序からも、授乳中の女性や乳児に対する危険性もないことがわかっています。さらに、新型コロナウイルスワクチンのみならず、どのようなワクチンも、男性、女性にかかわらず、生殖能力に影響を与えるという証拠はこれまで存在しません。

上記のような理由から、この講演において、Swamy博士は、妊婦は、新型コロナウイルスワクチンの接種を積極的に受けるべきであると結論しておられます。


<参照>
American Dental Association(米国歯科医師会)
https://www.ada.org/en/publications/ada-news/2021-archive/march/march-webinar-debunks-misconceptions-about-vaccines-regarding-pregnancy