新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の遺伝子変異を有する複数の新規変異株が報告されて以来、数ヶ月が経過しました。これらの変異株は、過去の感染によって得られた免疫や承認されているワクチンによって得られた免疫を回避する可能性があり、ウイルスの感染・伝播性が増加するため、患者数や重症者数の増加につながり、医療を急速に圧迫する恐れがあります。これまでは、国内でのまん延拡大防止のためには、入国者数の制限や検疫により渡航者による変異株の国内持ち込みを極力抑制し、さらに、変異株感染者の早期検知と、特に変異株クラスターを迅速に封じ込めることによる防御が重要でした。しかしながら、現時点で変異株が急速に主流になりつつあり、新規変異株に対する根本的な治療法を確立することが必要と思われます。このような背景で、第3回目は以下の論文(*1)を紹介致します。詳細は原著を参照してください。
南アフリカ株で最初に検出された新規変異株(501Y.V2)の従来株感染後に誘導された抗体からの免疫逃避
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株が世界中で報告されているが、ウイルス表面にあるスパイク蛋白を抗原にした従来のワクチンの効果が減弱する可能性を検討する必要がある。南アフリカ共和国は、これまで2波のコロナウイルスの感染拡大を経験してきたが、第1波は従来のコロナウイルスが、第2波は、501Y.V2新規変異株(N501Y変異)が優勢であることが知られている。
これらの結果は、今後、新型コロナウイルスの新規変異に応じてワクチンを作製することの必要性を示唆している。