米国では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンの予防接種が始まり数ヶ月が経過し、日本でも今月から、高齢者へのワクチンの予防接種が始まりました。ワクチン接種による予防効果が期待されるのは言うまでもありませんが、まずは、ワクチンの安全性を確認することが優先されます。これに関連して、米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)はv-safeとよばれる、ワクチン接種の安全性を監視するための新しいツールを開発しました。ワクチンを受けた人々(ボランティアとして登録)は、接種後1週間毎日スマートフォンを使って自分の情報を入れ、症状や副作用を記録します。すなわち、これはワクチン接種後にワクチンに起因する安全性の問題が起きていないかを素早く検知するための健康管理ツールです。今回は、我が国におけるワクチンの予防接種に参考になることもあり、v-safeの結果に関する論文を紹介致します。詳細は原著を参照してください。
新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン接種による反応原性
現在、米国で認可・推奨されている新型コロナウイルスのワクチンにはいくつかのタイプがあり、その種類によって、2回接種する必要があるものと(Pfizer /BioNTecとModernaのmRNA型ワクチンなど)、1回の接種で済むもの(Janssen/Johnson & Johnsonのアデノウイルスベクターを用いたワクチンなど)があります。この論文では、Pfizer /BioNTecとModerna、いずれかのmRNA型ワクチン接種後に行なわれたv-safeよるサーベイランス結果をまとめると、
v-safe登録者の多くがワクチン接種を受けた局所の痛みに加えて、頭痛、筋肉の痛み、悪寒、関節の痛み、発熱などの全身反応を訴えた。
第1回目接種後
接種を受けた局所の痛み(1回目:70.0%)
頭痛、筋肉の痛み、悪寒、関節の痛み、発熱などの全身症状(1回目:50.0%)
第2回目接種後
接種を受けた局所の痛み(2回目:75.2%)
頭痛、筋肉の痛み、悪寒、関節の痛み、発熱などの全身症状(2回目:69.4%)
ごくまれに、ワクチン接種直後に「アナフィラキシー」が発生することがあるが、接種後は、その施設内で待機し、アナフィラキシーの心配がなくなってから退出するため、v-safeには含まれない。
v-safeの登録者数がワクチンを接種した人の総数の10%以下であることを割り引いて考える必要があるものの、以上の結果は以前に行なわれた治験の結果にほぼ一致している。すなわち、新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン接種後に、接種を受けた局所の痛みや、頭痛、筋肉痛、悪寒、関節の痛み、発熱などの全身症状が起きることが予想される。これらの症状は初日に一過性に認める可能性が高いので、ワクチンを接種する場合は、それを認識して準備する必要があり、そうすることでワクチン接種に対する不安を軽減することになる。
先週お伝えしたようにコロナウイルスは絶えず変異しており、古い型に対するワクチンは新しい型には効きにくい可能性があります。したがって、今後、新しいワクチンの接種を繰り返す必要があるかも知れず、v-safeのようなワクチン予防接種後の副反応報告システムは有効であると思われます。