新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連

  • HOME
  • 新型コロナウイルスに関する最新情報

都医学研の新型コロナウイルスに関する研究 新型コロナウイルスに関する最新情報


2021/4/30

新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンの妊婦への安全性

文責:宮川 卓

妊娠中の方や、妊娠を希望している方で新型コロナウイルスのワクチンを接種して良いのか不安を感じている方は多いと思います。アメリカの疾病対策センター(CDC)の研究チームが、妊娠中の新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン接種に関する調査結果を、論文(引用文献1)として報告しましたので、紹介します。

この研究では、新型コロナウイルスのワクチン接種後の健康状態や有害事象*1を調べるために、CDCが開発したスマートフォンを用いたv-safeというシステムを活用しました。v-safeでは、ワクチン接種を受けた人の中で希望者がスマートフォンで接種後の身体の状態を申告することができます。新型コロナウイルスワクチン予防接種後の副反応報告システムの記事にもv-safeに関することが書かれていますので、読んで頂けると幸いです。 v-safeでは妊娠に関する質問も含まれており、実際に2020年12月14日から2021年2月28日までの間にワクチン接種を受けて、v-safeに参加した妊婦の方が35,691名いることがわかりました。また、対象となるワクチンは、モデルナ製とファイザー・ビオンテック製の両方のmRNAワクチンで、合計2回接種する必要のあるものです。
この35,691名の妊婦の方から申告された好ましくない反応の頻度を調べた結果、注射部位の痛み(1回目88%、2回目92%)、疲労・倦怠感(1回目30%、2回目72%)、頭痛(1回目18%、2回目55%)等が発現していることがわかりました。これらの頻度を、妊娠していない女性の頻度と比較した結果、ほぼ同等であることもわかりました。

v-safeに参加した人の中で、ワクチン接種時又はその直後に妊娠した5,230名にCDCから直接連絡を試みました。そして3,958名の妊婦の方が、妊娠や出産に関する、より詳細な研究への参加に同意しました。この中で712名が出産し、104名が自然流産、1名が死産に至ったことがわかりました。自然流産の90%以上が、妊娠13週前に発生していました。出産に至った712名の妊婦の方は、その98%が妊娠28週以降となる妊娠後期にワクチン接種を行っていました(ワクチンが認可されてから間もないため、出産にまで至った方の多くは、妊娠後期にワクチン接種したことになります)。次に、724名の新生児(双子も含まれる)の調査を行った結果、早産(9.4%)、在胎週数に対する低体重(3.2%)、先天異常(2.2%)が認められました。また新生児死亡例は確認されませんでした。これら妊娠中及び新生児に発生した事象の頻度を、通常ワクチンを接種しない状態で発生する頻度(過去のデータ)と比較した所、ほぼ同等でした。

これらの結果から、現時点では新型コロナウイルスに対するmRNAワクチン接種を受けた妊婦や新生児において、安全性における明らかな問題は認められなかったと、CDCは発表しています。しかし、この研究結果には制約(limitation)があることも、論文上で言及されています。
第1に、ワクチン接種をした3,958名の妊婦の方を対象とした解析等では、過去のデータ(つまりワクチン接種をしていないと仮定した群)を比較対象としています。このため、年齢、集団構成等の妊婦や新生児の健康に影響を与える要因を調整できていない可能性があります。
第2に、出産に至った712名の妊婦の方は、ほとんどが妊娠後期にワクチン接種を受けていました。先天異常等、妊娠初期の曝露に関連して発生する可能性のある事象については、現時点では評価できません。妊娠初期や妊娠中期におけるワクチン接種の影響の有無は、大部分がこれから解析がなされることになります。
さらに、この時点での登録数はまだ十分でなく、より長期的なフォローアップが必要であると筆者らは考えています。現在もこの研究は継続しており、より正確な、新型コロナウイルスのワクチン接種による妊婦や新生児への影響が評価されることが期待されます。

*1 有害事象と副反応(副作用)の違い

ワクチンや薬を使用した人に生じたあらゆる好ましくない、又は意図しない症状、兆候や病気等を有害事象と言います。有害事象にはそのワクチンや薬との因果関係が明らかでないものも含まれています。一方、副反応はワクチン接種によって生じる目的以外の有害な反応のことを言います。薬によって生じた目的以外の有害な反応は、副作用と言います。副反応(副作用)は、有害事象の中でワクチン(薬)との因果関係が否定できないものとなります。イメージを図1に示します。有害事象の情報は、今までに知られていない副反応(副作用)を調査するために重要となります。有害事象の情報が数多く集まることにより、偶然と思われていた有害事象の中から、今まで想定されていなかった副反応(副作用)が同定される可能性があるのです。

図1 有害事象と副反応(副作用)

引用文献1.
Tom T Shimabukuro, et al, CDC v-safe COVID-19 Pregnancy Registry Team, Preliminary Findings of mRNA Covid-19 Vaccine Safety in Pregnant Persons. N Engl J Med (2021). doi: 10.1056/NEJMoa2104983.