SARS-CoV-2とオートファジー (Autophagy)

文責：橋本款

先週お伝えしましたように、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の治療薬開発に関連して、多くの薬剤の治験が行なわれていますが、現時点で有効な治療薬はありません。当然のことながら、ゴールにたどり着くためには、SARS-CoV-2の病態をより深く理解することが重要かも知れません。したがって、今回はSars-Cov-2とAutophagyの関係に焦点を当てた以下の論文を紹介いたします。

文献
Miao G et al., ORF3a of the COVID-19 virus SARS-CoV-2 blocks HOPS complex-mediated assembly of the SNARE complex required for autolysosome formation. Dev. Cell 56, 427-442.e5 (2021).

背景；

Autophagyの機能の一つとして、侵入してくるウイルスなどの病原体と戦うための細胞内の主要な監視機構として働いて生体の恒常性を維持することが重要である。これに対して、多くのウイルスは、宿主細胞内での増殖・放出を促進するため、宿主のAutophagyを阻止し、時には、それを破壊するための戦略を発達させている。

この論文で、Miaoらは、SARS-CoV-2にコードされた膜貫通型タンパク質ORF3aがオートファゴソーム（Autophagosome）およびアンフィソーム（エンドソーム (Endosome)と融合したAutophagosome）とリソソーム(Lysosome)の融合を遮断させることによってAutophagyを阻害することを示した。

方法・結果；

HOPS複合体は後期Endosome表面とLysosome表面に存在し、Autophagosome表面でSNAREタンパク質と相互作用して融合可能なSNARE 複合体の形成を促進することが知られているが、ORF3aを発現する細胞 (HEK293T, Hela cells)において、ORF3aはVPS39と共局在し、VPS39とHOPS複合体の他の構成要素を後期Endosome表面とLysosome表面に蓄積させ、HOPS複合体とAutophagosomeのSNARE構成要素STX17との相互作用を妨害することによってSNARE複合体の形成を抑制した (Transient transfection, FLAG Pull-down assay, Double-immunofluoresence etc.)。
SNARE複合体の形成を阻害するO結合型β-N-アセチルグルコサミン（O-GlcNAc）トランスフェラーゼであるOGTをKnock downさせることによってSNARE複合体の形成を誘導すると、欠損していたAutophagyが回復した。
SARS-CoV-2由来のORF3aとは対照的に、SARS-CoV由来のORF3aでは、Autophagyの阻害もVPS39との相互作用も観察されなかった。
著者らは、さらに、宿主細胞のAutophagyを妨害するSARS-CoV-2タンパク質を他にも3つ同定した。

結論；

以上の結果より、Autophagy防御経路の遮断が宿主細胞内でのSARS-CoV-2の生存と複製に重要であると示唆された。

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SARS-CoV-2とオートファジー (Autophagy)

背景；

方法・結果；

結論；

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