新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンの接種が世界中で行なわれ、先行する欧米諸国では、ワクチンの効果が明らかになってきました(ワクチン2回接種で~95%の有効率!)。しかしながら、以前より、実験室レベルでは、変異株(VOC ; Variant of Concern)に対するワクチンの効力は減弱することが観察されていましたが、それに一致して、実際にワクチンの接種後においてVOCに再感染する例が多く報告されてきました。今回、紹介致します論文(文献1)は、イスラエルで行なわれたコホート研究で、VOCに対するワクチンの有効性が従来の株より低い場合、そのVOCによる感染の割合がワクチン未接種の対照者よりも高くなることを報告しました。
VOCに対するワクチンの有効性が従来の株より低い場合、そのVOCによる感染割合がワクチン未接種の対照者よりも高くなるはずだと仮定し、これをマッチド・コホート研究で、検討する。
イスラエル最大の医療機関であるClarit Health Servicesに登録したメンバーの中から、ファイザーとビオンテックのワクチンBNT162b2を接種した後に、SARS-CoV-2陽性と判定された患者と、年齢・性別・人種などをマッチさせた対照群の陽性判定者のウイルスRNAの塩基配列を調べ、B.1.1.7系(英国で見つかったα株)とB.1.351系(南アフリカで見つかったβ株)の割合を調べた。
本研究により、変異体を厳密に追跡すること、およびVOCの拡散を防ぐためにワクチンの接種を増やすことの重要性が強調された。
今回の論文では、B.1.1.7系とB.1.351系の変異株に関して検討されていますが、ごく最近は、インド由来の変異株「δ株」への感染が世界中に拡大しており大きな問題になっています。また、ワクチン2回接種から8ヵ月後には抗体レベルがピークアウトするとも言われています。これらのこともあってか、現在のワクチン接種が最も先行するイスラエルでは、8月1日より、60歳以上の市民を対象に3回目のワクチン接種の治験が始まりました。この結果次第では、我が国でも、3回目のワクチン接種が考慮されると思われます。結局、有効な治療薬が確立されるまでは、新しいVOCの出現とそれに対応するワクチンの接種を繰り返さざるを得ないのかも知れません。