2021/8/10
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンの接種が軌道に乗ってきた一方で、インド由来の変異型、デルタ株(The B.1.617.2 of variant of SARS-CoV-2)の流行の問題が一層深刻になってきました。デルタ株は従来のアルファ株やベータ株に比べてはるかに病原性が高く、一日も早く治療法の開発が望まれます。現状では、ワクチン以外の治療法は確立されていないことから、既存のワクチンのデルタ株(B.1.617.2)に対する有効性を検討する必要があります。今回は、COVID-19のワクチンであるBNT162b2(Pfizer/BioNTech製)またはChAdOx1 nCoV-19(AstraZeneca製)の2回接種後の有効性に関して、英国のグループより報告された論文を紹介致します(文献1)。
インド由来のコロナウイルス・デルタ株は英国で急増し、世界中でも検出されており、この変異型ウイルスへの対応は喫緊の課題である。したがって、デルタ株に対するBNT162b2(Pfizer/BioNTech製)またはChAdOx1 nCoV-19(AstraZeneca製)の有効性を明らかにする必要がある。
診断陰性例コントロール試験(Test-negative case-control design)により、デルタ株、または、アルファ株によって引き起こされるCOVID-19の症候に対するワクチン接種の有効性をデルタ株が循環し始めた期間にわたって推定した。具体的には、ウイルスのスパイク部分のシークエンスに基づいて、バリアントのタイプを特定し、英国における症候性COVID-19のすべてのシークエンスデータを使用して、患者のワクチン接種状況に応じていずれかの変異型の症例の割合を推定した。
本研究により、稀弱な集団においては、デルタ株に対してもワクチンの2回接種が望ましいと示唆された。
類似論文として、BNT162b2(Pfizer/BioNTech製)またはChAdOx1 nCoV-19(AstraZeneca製)の2回接種後の患者から採取した血清に対する中和効果が減弱していることを示した報告があります。
現時点では、既存のワクチンを2回接種することが現実的な選択といえそうです。もし可能なら、短時間のうちにデルタ株に特異的な(効力のある)ワクチンの作製を試みるのがよいかも知れません。今後、デルタ株だけでなく、他にも病原性の高い変異型ウイルスが出現する可能性を考慮すれば、短時間でワクチンの作製を行なうシステムを確立しておく意義は大きいでしょう。