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2021/9/21

ワクチン接種後に起きる重篤な有害事象

文責:橋本 款

現在、我が国においては、新型コロナ感染症(COVID-19)のワクチン接種率は50%を超え、今後、若者世代を含めて、残りの接種をいかに多く迅速に進めるかが課題になっています。COVID-19は高年齢で重症化リスクが高いのに対し、若年齢は軽症で済むことが多いにもかかわらず、SARS-CoV-2ワクチン接種による副反応は若年に多いことから、若者がワクチン接種に対して慎重になる傾向があります。実際、副反応には一過性の発熱や関節痛などの軽いものから、心筋炎、深部静脈の血栓、心筋梗塞など重篤なものまで多く経験されており、この問題を明確にする必要があります。これに関連して、今回は、イスラエルの健康保険データをもとにBNT162b2 (Pfizer/BioNTeck)ワクチン接種後の重篤な有害事象リスクを解析した報告 (文献1) を紹介します。


文献1.
Barda N et al., Safety of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Setting, N Engl J Med 2021 Aug 25 Online ahead of print


背景

COVID-19におけるワクチンの接種により、稀に心筋炎を含めた重篤有害事象が起きることが報告されているが、これがワクチン接種を接種しないでSARS-CoV-2に感染することにより引き起こされる場合のリスクと比較することは、今後のワクチン接種に重要である。

目的

イスラエル国民データを基に、臨床的に重要な有害事象のリスクを解析する。

  • イスラエルの医療保険組織、Clalit Health Servicesのデータ(イスラエル国民の約52%が加入)を用い、2020年12月20日~2021年5月24日にBNT162b2ワクチン接種を受けた人(接種群)、ならびに、ワクチン未接種者(コントロール群)を対象として、BNT162b2ワクチンの安全性を評価する(それぞれ88万4,828例を解析する)
  • 臨床的に重要な短期および中期の潜在的な有害事象(発熱、倦怠感、局所注射部位反応などの軽度の有害事象は含まない)について、Kaplan-Meier法を用いてワクチン接種後42日目の各有害事象のリスク比とリスク差を算出する。
  • また、SARS-CoV-2感染者と非感染者をマッチさせ、同様の解析を行なう(それぞれ17万3,106例を解析する)。

結果

  • ワクチン接種は、心筋炎(リスク比[RR]:3.24[95%信頼区間[CI]:1.55~12.44]、リスク差:2.7件/10万人[95%CI:1.0~4.6])、リンパ節腫脹(2.43[2.05~2.78]、78.4件/10万人[64.1~89.3])、虫垂炎(1.40[1.02~2.01]、5.0件/10万人[0.3~9.9])、および帯状疱疹感染(1.43[1.20~1.73]、15.8件/10万人[8.2~24.2])のリスク上昇との関連が有意に認められた。
  • 他方で、SARS-CoV-2感染者は非感染者比べて、心筋炎(RR:18.28[95%CI:3.95~25.12]、リスク差:11.0件/10万人[95%CI:5.6~15.8])のほか、急性腎障害(14.83[9.24~28.75]、125.4件/10万人[107.0~142.6])、肺塞栓症(12.14[6.89~29.20]、61.7件/10万人[48.5~75.4])、頭蓋内出血(6.89[1.90~19.16]、7.6件/10万人[2.7~12.6])、心膜炎(5.39[2.22~23.58]、10.9件/10万人[4.9~16.9])、心筋梗塞(4.47[2.47~9.95]、25.1件/10万人[16.2~33.9])、深部静脈血栓症(3.78[2.50~6.59]、43.0件/10万人[29.9~56.6])、不整脈(3.83[3.07~4.95]、166.1件/10万人[139.6~193.2])のリスクが大幅に上昇した。

結論

ワクチン接種により引き起こされる有害事象はワクチン未接種で感染した場合に発症する有害事象よりも頻度が少ないと考えられた。

  • 今回紹介した論文、及び、最近の類似論文の結果から判断すれば、安全性に対する不安だけでワクチン接種を躊躇するのは合理的ではないと思われます。
  • もちろん、ワクチンの種類、接種量および回数、さらに接種を受ける側の状態に応じて副反応の結果は異なると予想されますので、常に安全性を考慮しなければいけません。

文献1
Barda N et al., Safety of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Setting, N Engl J Med 2021 Aug 25 Online ahead of print