我が国でも新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の2回のワクチン接種が進み、最近では、新規感染者数が著しく減少して緊急事態宣言が解除され一安心かと思います。しかしながら、ワクチンを接種した後の、抗体価は一定の時間が経つと徐々に減弱することを忘れてはいけません。これに関連して、今回は、ワクチンの接種が、最も先行するイスラエルからの論文を紹介致します。まず、ワクチンの2回の接種の効果は、6ヵ月の時点で減弱し、特に、男性、65歳以上、免疫抑制状態が危険因子になることが報告されました(文献1)。また、イスラエルは、3回目の接種(ブースター接種)にもいち早く着手し、当初は成功したように見えましたが(文献2)、再び、感染者が急増しているようです。このように、刻々と変わる世界の状況に目が離せない状況です。
イスラエルでは、ワクチン接種率と有効性が高いにもかかわらず、SARS-CoV-2の症候性感染の発生率が増加しているが、この増加がBNT162b2ワクチン2回接種後の免疫低下に起因するかどうかは明らかにする必要がある。
ファイザー製ワクチンを2回接種した医療従事者を対象に、抗スパイクIgG抗体および中和抗体の検査を毎月、6ヵ月間実施した。線形混合モデルを用いて抗体価の動態を評価し、6ヵ月後の抗体価の予測因子を検討した(前向き横断研究、n=3808)。
ワクチンの2回の接種後、抗体価は一定の時間が経つと徐々に現弱した。特に、男性、65歳以上、免疫抑制状態にある人で著明に低下した。
イスラエルでは、2021年7月30日より、ワクチンの2回の接種後、少なくとも5ヵ月経過した60歳以上の成人に3回目の接種(ブースター接種)が容認された。したがって、その効果を確認するデータが必要である。
2021年7月30日より、8月31日まで1,137,804人に対して3回目の接種が行なわれた。ワクチン接種の効果はポアソン回帰分析で解析した。その結果、3回目のブースター接種後12日の時点で、接種しなかった人に比べて、接種した人におけるCOVID-19感染者の割合は有意に(11.3倍)低下していた。 また、接種後4~6日と12日の時点でワクチンの効果を比較したところ、接種後12日の時点で、接種後4~6日に比べて、COVID-19感染者の割合は有意に(5倍超)低下していた。
BNT162b2ワクチン2回目の接種5ヵ月経過した60歳以上の成人に対する3回目の接種(ブースター接種)の有意な効果を認めた。
定期的にワクチン接種を繰り返すことにより、永遠に感染が押さえられるならそれでもよいのかもしれませんが、いつかはワクチンの効果が期待出来なくなるのではないかと懸念されます。