新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の始まった当初は、小児の患者数は少なく、重症化する頻度も低いとされました。ところが感染力の強い変異株の出現により、小児の感染者数は増加し、学校でのクラスター、家族内の感染も多く報告されました。 特に、基礎疾患のある小児では重症化するリスクが高いと懸念されています。また、多臓器に影響が及ぶ重篤な病態である小児多系統炎症性症候群が感染後に発症することもあります。さらに、COVID-19の流行が続くと、子どもの生活は様々な制限を受け、学びや成長への影響が懸念されます。このような理由で、小児、青年に対するワクチンが考慮されるようになりました。NEJM誌でも、思春期児におけるCOVID-19 ワクチン BNT162b2 の有効性を評価した論文が何報か発表されています(文献1, 2)。
思春期児におけるCOVID-19ワクチンBNT162b2 の安全性,免疫原性,有効性
ごく最近まで、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するワクチンは16歳未満への緊急使用が認められていなかった。この集団を守り、対面学習や社会化を可能にし、集団免疫に貢献するためにも、安全で有効なワクチンが必要である。
現在進行中の国際共同プラセボ対照観察者盲検試験において、BNT162b2 30mgを21日間隔で2回注射する群と、プラセボを注射する群に1:1の割合で無作為に振り分け、12~15歳の参加者における BNT162b2 に対する免疫応答が、16~25歳の参加者と比較して非劣性であることを示すことを免疫原性の目的とした。12~15歳の集団における安全性(副反応と有害事象)、および確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19;2回目の接種後7日目以降に発症)に対する有効性を評価した。
12~15歳の思春期児 2,260例が接種を受け、その内訳はBNT162b2が1,131例、プラセボが1,129例であった。ほかの年齢層で認められたのと同様に、BNT162b2の安全性は良好であり、副反応は一過性で、軽度~中等度であった(注射部位の疼痛、倦怠感、頭痛など)。ワクチンに関連した重症の有害事象も全体的に少なかった。2回目の接種後の SARS-CoV-2 50%中和抗体の、12~15歳の参加者の16~25歳の参加者に対する幾何平均比は 1.76(95%信頼区間 [CI] 1.47~2.10)で、両側95%信頼区間の下限が0.67より大きいという非劣性基準を満たし、12~15歳の集団のほうが高い応答性を示した。また、SARS-CoV-2感染歴のない参加者において、2回目の接種後14日目以降に発症したCOVID-19症例は、BNT162b2接種者では認められず、プラセボ接種者では16例認められた。観察されたワクチンの有効率は100%(95% CI 75.3~100)であった。
12~15歳において、BNT162b2ワクチンは良好な安全性プロファイルを有し、誘導される免疫応答が若年成人よりも大きく、COVID-19に対して高い有効性を示した。
青年期のデルタ変異体に対するBNT162b2ワクチンの有効性
デルタ変異株が流行しているイスラエルで、ファイザー製ワクチンの効果に関して12~18歳を対象とした観察コホート研究で調べたところ、2回目接種後 7~21日の感染予防の有効率は90%、発症予防の有効率は93%だった。この結果から、ファイザー製ワクチンの接種完了後数週間は、デルタ株への感染とCOVID-19発症のどちらにも非常に有効であることが示唆された。
以上の結果から、少なくとも短期間においては、小児に対するCOVID-19ワクチン(BNT162b2)の接種に問題はないと考えてよさそうです。しかしながら、SARS-CoV-2の感染、及び、ワクチン接種のいずれに関しても、長期的な影響はわからないので(例えば、Antagonistic Pleiotropyで老年期になってから症状が出ることも理論上はあり得る)、継続して注意を払う必要があります。