新型コロナウイルスや医学・生命科学全般に関する最新情報

  • HOME
  • 世界各国で行われている研究の紹介

世界で行われている研究紹介 教えてざわこ先生!教えてざわこ先生!


※世界各国で行われている研究成果をご紹介しています。研究成果に対する評価や意見は執筆者の意見です。

一般向け 研究者向け

2021/12/21

COVID-19ワクチン追加接種(3回目)の必要性

文責:橋本 款

ウイルス感染症の予防効果は、麻疹や水痘のように1度罹ったら2度と罹らないものから、インフルエンザウイルスのように毎年抗原性を変化させて流行するため、それに合わせたワクチンを接種することが推奨されているものまで千差万別です。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防に関しては、BNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech)は、2回目接種(21日間隔)から数ヵ月後には重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染の防止効果が低下し始め、2回目接種から90日以降はブレークスルー感染のリスクが徐々に増加することが示されています。今回はそれに関する論文を報告し、COVID-19ワクチン追加接種の必要性を議論します(文献1)


文献1.
Israel A, et al., Elapsed time since BNT162b2 vaccine and risk of SARS-CoV-2 infection: test negative design study, BMJ 2021;375:e067873


目的

BNT162b2ワクチンの2回目接種後の経過期間とCOVID-19の罹患リスクとの関連を評価することを目的にした後ろ向きtest negative design(症例対照)研究を行った。

方法

  • イスラエルのLeumit Health Servicesの電子健康記録を解析に用いた。年齢18歳以上、2021年5月15日~9月17日の期間にRT-PCR法による検査を受け、ワクチンの2回目接種後少なくとも3週間が経過し、3回目の接種は受けておらず、COVID-19の既往歴がない集団を対象とした。
  • 2回目接種からRT-PCR検査までの期間が90日未満の集団を、30日ごとに90~119日、120~149日、150~179日、180日以上の集団に分けた。また、全年齢層のほか、3つの年齢層(60歳以上、40~59歳、18~39歳)に分けて解析した。
  • RT-PCR検査で検出されたSARS-CoV-2感染を主要結果とし、SARS-CoV-2陽性例と対照を、検査を受けた週、年齢層、人口統計学的集団(ユダヤ教徒、アラブ系住民、一般人口)でマッチさせた。条件付きロジスティック回帰を用いて、年齢、性、経済的状況、併発疾患で補正し、感染リスクの補正後オッズ比(OR)を算出した。

結果

  • 研究期間中に8万3,057例(平均年齢43.97[SD 16.89]歳、女性4万3,554例)がRT-PCR検査(SARS-CoV-2を検出)を受け、7,973例(9.6%)が陽性で、2回目接種からRT-PCR検査までの期間中央値は164日(IQR:138~185)であった。マッチング後のコホートは、陽性例が6,320例、陰性例は3万1,600例だった。
  • マッチング前の集団における2回目接種後の経過期間(日数)中央値は、3つの年齢層のいずれにおいても、RT-PCR検査陽性例が陰性例よりも長かった。すなわち、60歳以上では、陽性例が192日、陰性例は173日(p<0.001)、40~59歳ではそれぞれ185日および166日(p<0.001)、18~39歳では174日および164日(p<0.001)であった。
  • マッチング前の集団における2回目接種後のSARS-CoV-2陽性率(ブレークスルー感染の割合)は、接種後の経過期間が長くなるほど有意に高くなり、21~89日(参照集団)の1.3%に対し、90~119日が2.4%(OR:1.91、95%CI:1.39~2.67)、 120~149日が4.6%(3.67、2.75~4.98)、150~179日が10.3%(8.82、6.67~11.90)、180日以上は15.5%(14.10、10.68~19.01)と、経時的に上昇した。また、2回目接種から180日以上が経過すると、SARS-CoV-2陽性率が3つの年齢層のすべてにおいて上昇した(p<0.01)。
  • マッチング後の集団において2回目接種から90日以上経過後の、参照集団(90日未満)と比較した感染の補正後ORは、90~119日が2.37(95%CI:1.67~3.36)、120~149日が2.66(1.94~3.66)、150~179日が2.82(2.07~3.84)、180日以上は2.82(2.07~3.85)であった。

結論

以上の結果から、3回目のワクチン接種が必要であることが示唆される。

上記論文はデルタ変異株に対するものですが、気になるオミクロン(Omicron)株に対してもBNT162b2ワクチン追加接種が有効らしいという予備的な結果が発表されています。結局、現時点でワクチンの追加接種(3回目)が適切に思われます。


文献1
Israel A, et al., Elapsed time since BNT162b2 vaccine and risk of SARS-CoV-2 infection: test negative design study, BMJ 2021;375:e067873