2022/1/11
年が明けて間もない今、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する最大の興味は言うまでもなくオミクロン株に関するものでしょう。オミクロン株はその変異の多さを反映して感染力が高く、国内・外を問わず、これまでに経験したことのないスピードで広がっています。いずれ我々の多くが感染することになるでしょうが、デルタ株などのこれまでの株に比べて、重症度が低いのでパニックになる必要はないかも知れません。しかしながら、まだ、不明な点も多く、基本的な理解を増すことが重要です。したがって、今週もオミクロン株に関する論文(文献1)に焦点を当てます。最近になって、ようやく、査読を経た論文が掲載されるようになりました。
オミクロン株(B.1.1.529, variant of concern)はスパイク部分に多くの変異があり、感染力が高くワクチンの効果をすり抜けて広がる可能性が高い。南アフリカ共和国はオミクロン株を含め、これまで4つのCOVID-19感染の波(第1波:祖先の変異株、第2波:ベータ株、第3波:デルタ株、第4波:オミクロン株)を経験してきたが、オミクロン株による第4波を過去の波とSARS-CoV-2陽性の入院患者において比較検討する。
Netcareは南アフリカ共和国を本拠地として私立病院経営、緊急医療、緊急移送サービス(49の病院、>10 000床)などをしている公開株式会社であるが、4つのCOVID-19感染の波において、地域社会のSARS-CoV-2の陽性率が26%になった時までの期間におけるSARS-CoV-2陽性の入院患者の特徴、酸素供給、人工呼吸器の必要性、ICUへの入院、入院期間、死亡率などを電子管理システムより抽出した。尚、Netcareは入院時のトリアージを決めるため、qRT-PCR, 迅速抗原テストによりSARS-CoV-2の感染状況を診断している。各感染波におけるカテゴリ変数をχ2試験と連続型変数(ANOVA)を用いて比較した(有意差: 5%)。
今回の解析にはいくつかの限界があるが、南アフリカ共和国におけるオミクロン株による第4波においては、これまでの第1-3波に比べて、より若年層に多く、併存疾患、急性呼吸器疾患は少なく、入院期間は短く、重症化は少なく、致死率は低いと思われた。