最近、お伝えしましたように(「地中海食と典型的西洋食の野生型マウスにおける神経保護効果の比較解析」2025年9月4日参照)、地中海食は、多くの慢性疾患と同様に神経変性疾患に対しても予防効果があると考えられています。しかしながら、その重要性にも関わらず、これまで、地中海食の神経変性疾患に対する予防効果を大規模のコホートで報告した例はありませんでした。今回、スウェーデン・ストックホルムにあるカロリンスカ研究所のEmily E. Joyce博士らは、スウェーデン人の女性42,582名について、「スウェーデン女性のライフスタイルと健康に関するコホート研究」*4 における1991~1992年の地中海食の摂取に関する記録とスウェーデン国民患者登録(NPR)*5より得られた2022年時点における神経変性疾患発症の情報を組み合わせた後ろ向き研究を行いました。その結果、興味深いことに、地中海食にアドヒアランスしたグループはそうでないグループに較べて、60歳以上のPD、及び、60歳未満のALSの罹患数が有意に減少していました。対照的に、ADは地中海食摂取の影響を受けませんでした(図1)。わずか2年間の地中海食の摂食で、将来の神経変性疾患の発症を予防することが出来るのだろうかと驚かされますが、再現性を含めて、今後、研究が発展することが期待されます。これらの結果は、npj Parkinson’s Diseaseに発表されました(文献1)ので報告いたします。
文献1.
Joyce, E.E. et al. Mediterranean dietary pattern and risk of neurodegenerative diseases in a cohort of Swedish women. npj Parkinsons Dis. 11, 71 (2025)
地中海食は、神経変性疾患に対して予防効果があると考えられている。本プロジェクトは、スウェーデンの女性において、大規模コホートで検討することを研究目的とした。
我々の結果は、地中海食へのアドヒアランスにより、60歳以上のPD、60歳未満のALSの罹患が予防される可能性を示唆している。