以前に、ASDとSCZの病態が重複することを網羅的に解析した論文を取り扱いましたが(自閉スペクトラム症と統合失調症のオーバーラップについての分子生物的解析〈2024/12/26掲載〉)、興味深いことに、ASDは高齢期になると認知障害、運動障害が、顕著になることが多く、ADやPDなどの神経変性疾患とも重複する可能性が言われていました。しかしながら、これまでの報告では症例数が少ないこともあり、断定的な結論には至っていません。このような状況で、米国・ペンシルバニア州フィラデルフィアにありますドレクセル大学のGiacomo Vivanti博士らは、米国の2大保険医療システムであるメディケア、及び、メディケイド加入者のデータを解析することにより、国家的大規模での後ろ向きコホート研究を行ない、その結果、ASDとADの間の相関性を確認しました。したがって、ASD、SCZ やADのメカニズムは共通しており、将来的には、その知見に基づいた診断マーカーや新規治療薬の開発に役立つ可能性があると期待されます(図1)。また、SCZは高齢期になると認知障害を呈することから、SCZとADの重複の可能性は以前より議論されていましたが、最近のメタ解析は、SCZとADのアミロイド病理を介した相関関係には否定的でした(統合失調症の記憶障害と認知症の関係〈2024/7/30掲載〉)。しかしながら、アミロイドβの蓄積とは異なるメカニズムが介在する可能性について再考の余地がありそうです。これらの結果は、最近のJAMA Netw Openに掲載されましたので、今回はその論文(文献1)を紹介いたします。
文献1.
Prevalence of Dementia Among US Adults With Autism Spectrum Disorder., Giacomo_Vivanti et al, JAMA Netw Open. 2025;8(1):e2453691.
ASDはADやPDなどの神経変性疾患の病態と重複する可能性が言われてきたが、これまでの報告では症例数が少ないので、断定的な結論には至っていない。本プロジェクトでは、大規模の症例数を用いたコホート研究を行ない、この問題の結論を得ることを研究の目的にした。