
近年の高齢社会化の到来により、高齢で疾患を持つ患者数の増加・医療費や介護の負担は大きな社会問題になっています。それに応じて、老年医学の領域では、基礎的・臨床的研究が精力的に行われていますが、最近、お伝えしていますように、セノリティクスと呼ばれる新しい治療研究が大きく注目されています(老化除去薬併用(ダサチニブ+ケルセチン)によるマウス糖尿病性腎症の治療〈2026/3/24掲載〉)。セノリティクスは、老化細胞除去薬により、老化細胞を標的とし、老化細胞を破壊・除去するアプローチですが、その作用メカニズムをよりよく理解することは、薬剤開発を効率的に遂行するだけでなく、老化の基礎的なメカニズムの解明に繋がる可能性があり、非常に重要です。以前より、老化した線維芽細胞がセノリティクス薬の標的になることからも、線維芽細胞の老化における役割が推定されていました。今回、中国・湖南省にある中南大学のXin-Xin Guan博士らは、ヒトPF及び マウスPFモデルのいずれの系においても肺線維芽細胞において、Fn14が高発現しており、Fn14のノックダウンにより、肺構造の乱れが軽減され、マウスPFモデルの肺における線維芽細胞の老化が軽減されることを見出しました(図1)。これは、セノリスティック療法によりFn14を標的にすることが、治療に結びつくことを示唆するものであり、非常に意義深いと考えられます。これらの結果は、最近のCell. Mol. Life Sci.誌に掲載されましたので、今回は、この論文(文献1)を報告いたします。このような老化線維芽細胞に発現するFn14を標的にしたセノリスティック療法が、多くの高齢疾患の治療に共通したアプローチになるかどうか興味深いと思われます。
文献1.
Fibroblast growth factor-inducible 14 accelerates pulmonary fibrosis by inducing fibroblast senescence in mice
Guan, XX. et al. Cell. Mol. Life Sci. 83, 165 (2026).
最近の研究は、線維芽細胞老化がPFの病態において重要な役割を果たすことを示している。注目すべきは、老化線維芽細胞を標的とするセノリスティック療法が、PFの改善において顕著な有効性を示していることである。したがって、線維芽細胞老化のメカニズムを解明することは、PFを予防するための有望なアプローチであり、これを本研究の目的とした。
この目的のため、PF患者さん、及び、bleomycin (BLM)を処理したマウス由来の肺上皮の線維芽細胞を解析した。具体的には、線維芽細胞の老化におけるメディエーターとして、線維芽細胞成長因子14(Fn14)を同定した。
以上の結果は、Fn14の持つ線維化作用が線維芽細胞の老化を促進し、PFの病態を進行させることを示唆しており、PFの治療におけるFn14標的療法を支持するものである。