
パーキンソン病 (PD)の多くは孤発型ですが、5~10%のPDは遺伝性(家族性)です。αシヌクレイン(PARK1, 4)やパーキン(PARK2)が同定されて以来、現在、22遺伝子座の単一遺伝子異常に伴うPDが知られています。遺伝性PDの中で最も頻度が高いのは、leucine rich-repeat kinase 2(LRRK2)遺伝子変異による常染色体優性PDです(PARK8)。興味深いことに、LRRK2遺伝子変異を有するPARK8の患者さんは、孤発性PD患者さんと臨床症状が類似していること、さらに、孤発型PDの患者さんの多くはLRRK2のキナーゼ活性が高いことなどから、LRRK2遺伝子変異による神経変性機構を解析することが、PDの病態解明、及び、治療に結びつく可能性があり、特に、LRRK2の活性を抑制することが治療に結びつくのではないかと予想されました(図1)。このようにして、LRRK2阻害剤*4の開発(パーキンソン病の治療研究;G2019S LRRK2キナーゼ阻害剤によるミトコンドリアDNA損傷の回復〈2024/9/5掲載〉)が臨床試験(第3相)で試みられています。PDにおいてLRRK2が治療標的になる可能性は高いと考えられますが、現時点では、治療法が確立されていない以上、いくつかの異なる方法でアプローチすることが重要です。このような状況で米国・Biogen社のOmar S. Mabrouk博士らは, PD患者さん(n=40)に対してアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与してLRRK2mRNAをノックアウトする核酸療法(第1相臨床治験)を行いました。その結果、これに関連する重篤な有害事象は認められず、脳脊髄液中リソソームタンパク質のレベルが同時に低下したことで、LRRK2アンチセンスオリゴヌクレオチドによる核酸医療がPD病態生理学に影響を及ぼす可能性があることがわかりました。今回は、Nat Med.誌に掲載された論文(文献1)を報告いたします。今後、阻害剤の開発とともに、PDの治療研究が発展して行くことが期待されます。
文献1.
LRRK2-targeting antisense oligonucleotide in Parkinson’s disease: a phase 1 randomized controlled trial
Omar S. Mabrouk et al. Nat Med. Published: 24 March 2026
LRRK2変異は、PDの最も一般的な遺伝的原因である。もし、遺伝子変異、その他の原因でLRRK2の活性が亢進することが、PDを推進するならば、アンチセンスオリゴヌクレオチド治療でLRRK2の発現レベルを低下させ、LRRK2活性を抑制することが、PDの治療に有効である可能性がある。本プロジェクトは、これに関する安全性・有効性を評価する第1相臨床治験(ClinicalTrials.NCT03976349)を行うことを研究目的とした。
今回のLRRK2標的型アンチセンスオリゴヌクレオチド治療がPD病態生理学に影響を及ぼす可能性があることがわかった。また、LRRK2治療薬の安全性は確認された。以上の結果より、の第1相臨床治験は成功したと考えられる。