平成30年度 連携大学院生の声

~都医学研に来たきっかけ、これから目指すこと~

都医学研を志望したきっかけ

三井さんフォト

私は学部時代に生命科学を専攻しており、がんの発生メカニズムやそれに対する体内での免疫機構に興味をもっていました。関心のあった医学に関する授業を積極的に受講していたところ、外部講師として来ていた現在所属している研究室のリーダーによる講義を受けることになりました。その講義の内容が興味深かったので現所属先の研究室により発表された論文を読んでみました。すると現在の研究対象であるCXCL14というケモカインに強い興味を引かれました。そこで研究所を見学しに行きました。実際に研究所を訪問すると、大学には無い充実した実験設備を目の当たりにすることができました。将来自分の研究テーマを進める上でこのような充実した環境を活かして実験をしたいと思い都医学研を志望しました。

研究内容および目標

三井さんフォト

現在、私が研究しているのはCXCL14というケモカインとToll-like receptor9 ( TLR9 ) という受容体が関与する免疫シグナリングカスケードとの関連性です。ケモカインは白血球の遊走を担う塩基性タンパク質の一群です。一方でTLR9は、微生物由来の非メチル化 CpG DNAを認識して自然免疫系を活性化する細胞内センサーです。現在所属している研究室はCXCL14がTLR9を介した自然免疫活性化能を持つCpG DNAに高親和性で結合し樹状細胞への取り込みを促進することにより、CpG DNAの活性を大幅に増強することを示しました。TLR9シグナル系が活性化されると、炎症性サイトカインが誘導され、獲得免疫系であるTh1応答も引き起こされます。したがって、CXCL14を投与することで、自然免疫系を増強できるだけでなく、Cytotoxic T lymphocytes ( CTLs )を介したがん免疫系をも強化させられるかもしれません。しかしCXCL14/CpG DNA複合体が細胞内に取り込まれる際の受容体は同定されていません。今後、CXCL14/CpG DNA複合体の受容体を同定し、上記のような反応の分子メカニズムを解明してCXCL14を利用したがん免疫増強剤を開発することを目標に研究しています。また、CXCL14は抗がん活性、関節リウマチ、糖尿病性インスリン耐性といった生体内の様々な生理反応に関係しており、それ自体の機能にも興味を持っています。私は将来的にCXCL14の機能も解明したいと思っています。