開催報告

2023年度 第4回 都医学研都民講座(2023年9月19日 開催)
現代のアディクション


依存性物質プロジェクト 副参事研究員 井手 聡一郎

井手副参事研究員
井手副参事研究員

今回の都民講座は、「現代のアディクション」と題してハイブリッド方式で開催しました。まず私から、「身近で多様なアディクション」と題してお話ししました。アディクションは、大麻等の薬物やアルコール、タバコ等を対象とした依存である物質依存に加え、ギャンブルやゲーム、盗癖等の特定の行動を繰り返し行ってしまう行動嗜癖も含めた概念です。近年、アディクションの問題は多様化と拡大が進んでおり、国内外における問題をお伝えすると共に、アディクション問題解決に向けた、基礎研究の取り組み状況をお話ししました。

曽良一郎先生
曽良一郎先生

続いて神戸大学大学院医学研究科デジタル精神医学部門特命教授の曽良一郎先生を講師にお迎えし、「ネット・ゲーム依存の基礎知識と対応について」と題したご講演を賜りました。オンラインゲーム等の普及に伴い、ネット・ゲーム依存は世界的に問題となっています。児童青年期では、学校が面白くない等の理由からネット・ゲームの過剰な使用が始まり、引きこもりや不登校によって依存がさらに進んでしまう悪循環が生じています。ネット・ゲーム依存は、インターネット普及前と比べ、使用のコントロールが難しくなっていることが影響を与えています。これは、以前はゲームを最後までクリアすると自然にやめましたが、オンラインゲームではコンテンツが頻繁にアップデートされるため、飽きることが無いことが原因の一つとされています。また、現実生活では対人関係が不得手でも、顔の見えないオンラインでは外交的で社交的な感覚を持ちやすいこと、さらに、現実生活での不安やストレスの軽減手段や逃避場所としてゲームが使われていることが挙げられるとお話しいただきました。一方で、ゲームを有効利用したデジタル治療(デジタルセラピューティクス:DTx)に関してもお話しいただきました。会場にはアディクション問題にご関心のある様々な方々にお越しいただき、ご講演後に多くの質問を頂戴しました。曽良先生のご講演や質問に対するご回答を拝聴し、私自身もネット・ゲーム依存への理解を深めることができました。