開催報告

2025年度 第6回 都医学研都民講座 (2025年11月7日(金)開催)
新薬の研究と開発について
~新しい薬ってどうやってできるの?認知症薬剤開発物語~


*開催報告の所属先名については、開催日時点のものです。

認知症研究プロジェクトリーダー 野中 隆

「2025 年度第6回都医学研都民講座」は、ヤンセンファーマ株式会社の渡辺小百合プロジェクトリーダーを講師に迎え、「新薬の研究と開発」をテーマにお話しいただきました。

講師の渡辺さんは、かつて当研究所の長谷川成人副所長の研究室にて従事されていた経歴を持ちます。現在は製薬企業のプロジェクトリーダーとして、新薬を患者さんのもとへ届ける架け橋となっている「縁」を感じる講座となりました。

■ 成功率は 0.003%。一滴の薬に込める 10 年の月日

新しい薬が誕生するまでには、10 年以上の歳月と約 3,000 億円もの研究費が投じられます。数千の候補から承認にたどり着くのはわずか 0.003%。渡辺さんは「ホールインワンを狙い続けるような確率」と語ります。それでも開発を続けるのは、病気に苦しむ患者さんの「待っています」という声が原動力になっているからです。

渡辺さんが手がけているプロジェクトの一つは認知症をターゲットとした新薬の開発研究です。認知症は高齢社会における喫緊の課題であり、日本国内の患者数は 2025 年に 700 万人を超えると予測されています。そうなりますと社会および医療システムへの影響は極めて大きくなることが予想されますが、未だ根本的な治療薬は存在していません。開発が遅滞している要因の一つとして、発症メカニズムの未解明が挙げられます。多くの認知症の患者脳では異常タンパク質の凝集体が形成され、病態の進行に伴い細胞間を伝播し、その蓄積が拡がることが知られています。したがって、これら凝集体の形成および細胞間伝播の抑制は、治療・予防戦略において極めて重要です。我々の認知症研究プロジェクトでは、患者脳における病変を詳細に解析するとともに、その特徴を忠実に再現する病態モデルを構築し、発症メカニズムの解明を目指しています。さらに、同モデルを用いて新規治療薬および予防薬の開発を目標にして、日夜研究を進めております。

■ 認知症治療の新しい扉が開く

最近では、アルツハイマー病の原因物質に直接働きかける新しいタイプの薬が日本でも承認され、大きなニュースとなりました。こうした新薬が「これまでの治療の選択肢を広げ、患者さんとご家族の希望になること」を強調されました。

当研究所としても、こうした民間企業とのネットワークを大切にしながら、認知症という大きな課題の解決に向けて、一歩ずつ着実に研究を深めていきます。

野中隆プロジェクトリーダー,渡辺小百合プロジェクトリーダー
左から、野中隆プロジェクトリーダー、渡辺小百合プロジェクトリーダー
渡辺小百合プロジェクトリーダー ご講演の様子
渡辺小百合プロジェクトリーダー ご講演の様子