難聴プロジェクトリーダー 吉川 欣亮
当研究所において第 15 回都医学研シンポジウムを開催いたしました。本シンポジウムは「次世代のヒト疾患モデル動物」をテーマに掲げ、学術界から広く一線の研究者を招聘し、最新の知見を共有するとともに活発な議論が交わされました。
医学研究の使命は、病気のメカニズムを解明し、画期的な治療薬を創出することにあります。その成否を握るのは、いかにヒトの病態を忠実に再現した「疾患モデル」を構築できるかという点に集約されます。
シンポジウム前半では、理化学研究所の天野先生より、慢性腎臓病、特に「アルポート症候群」に関する最新の研究成果が報告されました。ゲノム編集技術によって、患者の遺伝子バリアントをマウスで再現し、腎臓の血液ろ過フィルター機能を担う糸球体が崩壊していく過程を三次元で可視化した知見は、次世代治療法である「核酸医薬」の有効性検証において、極めて重要な道標となります。
また、千葉県がんセンターの奥村先生からは、日本固有の野生マウス(MSM 系統)を用いた「がん抵抗性」という、独創的な視点の研究が紹介されました。「なぜ病気になるのか」を追うだけでなく、「なぜ病気にならないのか」を解き明かすことで、がん予防や新たな治療戦略の構築に繋げる試みは、参加者からも高い関心を集めました。
昨今、動物実験に代わる手法として AI やオルガノイド技術(ミニ臓器)が注目されています。しかし、生命現象における「個体としての複雑な応答」を理解するためには、動物を用いた研究が不可欠です。
私たちは、高度なバイオリソースを適正に管理・提供する責務を負うとともに、インシリコ(コンピューター解析)、インビトロ(試験管内実験)、そしてインビボ(個体実験)を有機的に統合していく必要があります。これら最新技術の調和こそが、研究の再現性を高め、臨床への橋渡しを確かなものにすると確信しております。
本シンポジウムを通じて、次世代の疾患モデル動物が、単なる研究の手段ではなく、病に苦しむ人々へ光を届けるための「羅針盤」であることを改めて発信いたしました。当研究所は、都民の皆様の健康を守る拠点として、今後も倫理的配慮と科学的厳密さを両立させ、医学の発展に寄与する研究に邁進してまいります。ご来場いただいた皆様、ならびに日頃より当研究所の活動を支えてくださる皆様に、深く感謝申し上げます。