都立病院等連携研究 都立病院等連携研究業績 多摩キャンパス
神経カンファレンス
駒込・医学研
リサーチカンファレンス
TMEDフォーラム その他

第2回駒込・医学研リサーチカンファレンス

「第4回駒込病院・都医学研リサーチ・カンファ」 を開催しました


東京都医学総合研究所(医学研)では、疾病の仕組みの解明や、治療効果の検証などを行い、創薬や治療法の確立なども視野に入れながら、研究を行っています。一方、病院においては、患者の病状や治療効果を診る中で生じた臨床での疑問やアイディアを、解明したいというニーズがあります。医学の進展のためには、臨床と研究の両輪の協働や、トランスレーショナルリサーチ※1やリバーストランスレ―ショナルリサーチ※2の進展が欠かせません。

そのため、医学研と都立駒込病院では、本年6月より、合同で研究や臨床の状況を発表・討論しあう「リサーチカンファ※3」を開始しました。初回は、イントロダクションとして、お互いの施設紹介や、基礎研究・臨床研究が抱える課題を総合的に議論しました。

第2回は、具体的な課題の下での討論の活性化を目的として、11月30日(月)に、「緩和医療」をテーマとして開催し、約40名が参加しました。

開催に先立ち、医学研参加者には、駒込病院の最新の放射線治療機器(トモセラピー、サイバーナイフ、Vero 4DRT)や、緩和ケア病棟の説明をいただき、通常、研究の場では見られない、都道府県がん診療連携拠点病院4におけるがん医療の最前線を体感したうえでの、講演・意見交換となりました。

講演では、医学研からは、「鎮痛剤の感受性を予測する」というテーマで、池田和隆 依存性薬物プロジェクトリーダーが講演を行いました。鎮痛剤「オピオイド」の感受性と関連する遺伝子配列の差異をゲノムワイド関連解析※5などにより同定することや、遺伝子配列の違い、年齢、身長、性別等からオピオイドの適量を予測する計算式の構築とその臨床での検証、東京歯科大学で行われている世界初のテーラーメイド疼痛治療※6について、説明がありました。

駒込病院からは、「緩和ケア領域における研究の現状と問題点」というテーマで、田中桂子 緩和ケア科部長が、講演を行いました。緩和ケア対象の歴史的な拡がりを背景に、その研究テーマ・方法論のバリエーション、緩和ケア分野で臨床研究が困難な理由や実例について、お話いただきました。また、田中部長、同じく緩和ケア科の鄭陽医長・前田隆司先生・鈴木梢先生から、各自臨床の現場で関心を持たれているテーマについてお話があり、患者教育から、主治医・医療スタッフの心理サポート、病態評価や薬物療法から予後予測といった、幅広い課題が提示されました。

参加者からは、「感受性・応答性については、複数の病院、多様ながん種・症例でみることも重要ではないか。」、「終末期医療の現場の多様なニーズの中で、鎮痛薬の副作用など、協働する接点は多いことがわかった。また、疼痛に限らず、疫学調査的な手法など、多方面からアプローチできる可能性がある。」「疼痛については、患者の精神的な状態とも関連があるため、投薬コントロールの際に配慮している。」などの意見が出され、今後の協働を予感させるものとなりました。

医学研では、今後とも、都立病院等との連携を強化しながら、実用化を視野に入れた研究支援体制の整備に向けて取り組んでいきます。


※1 トランスレーショナルリサーチ:橋渡し研究ともいう。基礎研究の成果を診断・治療法の開発につなげるための研究

※2 リバーストランスレーショナルリサーチ:薬や診断法の臨床現場における問題点を基礎研究にフィードバックする研究

※3 リサーチカンファ:リサーチ・カンファレンスをもとにした名称。カンファレンスは、関係者が一堂に会し、診立てやサービス等を連絡調整する会議で、医療現場においては、ケース・カンファレンス(症例検討会)として、患者の治療・ケアの方針に係る検討を行う。リサーチ・カンファレンスは、個々の症例ではなく、疾患やケアに関する研究について、各々の立場から検討しあうことを目的とする。

※4 都道府県がん診療連携拠点病院:専門的ながん医療の提供を行う医療機関の整備を図るとともに、がん診療の連携協力体制の整備を図るほか、がん患者に対する相談支援及び情報提供を行うため、都道府県が推薦し、国が指定する。都には、都立駒込病院と公益財団法人がん研究会有明病院の2か所がある。

※5 ゲノムワイド関連解析:全ゲノム領域にわたり散在する遺伝子配列の違いに関する情報を多数用いることにより、個人の特性、疾患のかかりやすさや、薬剤の効きやすさなど関連する遺伝要因を探索する手法

※6 テーラーメイド疼痛治療: 患者の個人差(特に遺伝子診断により得られる遺伝子情報)に基づき、最適な薬剤や治療法を判断する手法を用いた疼痛治療。