東京都医学総合研究所のTopics(研究成果や受賞等)

2021 2020 2019 2018 2017 2016 2015 2014

2021年5月26日
統合失調症プロジェクトの小堀晶子非常勤研究員らは、統合失調症の認知機能障害のうち、処理速度の低下と終末糖化産物(Advanced glycation end-products; AGEs)が関連することを明らかにしました。

終末糖化産物(ペントシジン)の蓄積は統合失調症の処理速度の低下と関連する

当研究所 統合失調症プロジェクトの小堀晶子非常勤研究員、宮下光弘主席研究員、糸川昌成副所長、新井誠プロジェクトリーダーらは、統合失調症の認知機能障害のうち、処理速度の低下と終末糖化産物(Advanced glycation end-products; AGEs)が関連することを明らかにしました。

本研究は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)脳科学研究戦略推進プログラム(融合脳)に係る「発達障害・統合失調症・てんかん等の鑑別、病態、早期診断技術及び新しい疾患概念に基づいた革新的治療・予防法の開発(代表 糸川昌成)」、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業、公益財団法人上原記念生命科学財団、公益財団法人住友財団などからの研究助成支援により実施しました。 この研究成果は、2021年5月26日(米国東部時間)に米国科学誌『PLOS ONE』にオンライン掲載されました。

<論文名>
“Advanced glycation end products and cognitive impairment in schizophrenia”
終末糖化産物は統合失調症の処理速度の低下と関連する
<発表雑誌>
PLoS ONE
DOI:10.1371/journal.pone.0251283
URL: https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0251283

発表のポイント

  • 統合失調症における終末糖化産物(Advanced glycation end-products; AGEs)*と認知機能障害の関連を検証した。
  • AGEsの上昇が処理速度の低下と有意に関連した。年齢、性別、Body mass index、教育年数、抗精神病薬量や精神病症状などの交絡要因を調整した後も、有意な関連は残った。

研究の背景

統合失調症は思春期に多く発症し、慢性的に経過する疾患と解釈されてきましたが、現在では、症状があっても病気と上手に付き合うことで、自分らしい生活を送ることが達成できる(リカバリー)と考えられています。統合失調症の症状として、幻覚妄想や意欲減退などがよく知られていますが、最近では認知機能障害が重要な症状として認識されています。認知機能障害は社会機能と密接に関係し1)、とくに就労状況に影響を及ぼします2)。私たちはこれまで、統合失調症患者の末梢血中の終末糖化産物(Advanced glycation end-products; AGEs)が健常者と比較して有意に高いことを報告してきましたが3)、AGEsと認知機能障害との関連は検証されていませんでした。

発表内容

本研究では、AGEsと認知機能障害との関連を明らかにするために、58人の統合失調症の患者さんにご協力いただき、代表的なAGEsであるペントシジンの血液中の濃度を測定し、同時に心理士による認知機能の評価を行いました。認知機能は年齢、性別、教育年数、内服している抗精神病薬の量や精神病症状の影響をうけるため、これらの影響を考慮した統計解析を行って、ペントシジンが認知機能と関連するかどうか検証しました。その結果、ペントシジンの増加が、処理速度の低下、と関連することを見出しました(表1参照)。

表1: ペントシジンと処理速度の関連

処理速度は、日常生活、特に仕事をする場面で役に立つ認知機能です。治療によってAGEsの増加を抑えることができれば、就職や仕事の継続に良い影響がもたらされる可能性が高まり、リカバリーの促進が期待されるかもしれません。

<用語解説>

*終末糖化産物;
糖とタンパク質または脂質が非酵素的に反応すること(メイラード反応)によって作られる生成物の総称

引用文献

  • Green MF, Kern RS, Braff DL, Mintz J. Neurocognitive deficits and functional outcome in schizophrenia: are we measuring the "right stuff"? Schizophr Bull . 2000; 26: 119-136.
  • Wykes T, Huddy V, Cellard C, McGurk SR, Czobor P. A meta-analysis of cognitive remediation for schizophrenia: methodology and effect sizes. Am J Psychiatry. 2011; 168: 472-485.
  • Arai M, Yuzawa H, Nohara I, Ohnishi T, Obata N, Iwayama Y, Haga S, Toyota T, Ujike H, Arai M, Ichikawa T, Nishida A, Tanaka Y, Furukawa A, Aikawa Y, Kuroda O, Niizato K, Izawa R, Nakamura K, Mori N, Matsuzawa D, Hashimoto K, Iyo M, Sora I, Matsushita M, Okazaki Y, Yoshikawa T, Miyata T, Itokawa M. Enhanced carbonyl stress in a subpopulation of schizophrenia. Arch Gen Psychiatry. 2010; 67:589-97.

2021 2020 2019 2018 2017 2016 2015 2014