東京都医学総合研究所のTopics(研究成果や受賞等)

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2021年11月19日
感染制御プロジェクトの小原道法特別客員研究員らは、東京都の依頼に基づき、都立病院関係者の検体(血清)を用いて、新型コロナウイルスワクチン接種後7ヶ月程度経過した方の抗体を測定しました。

~ ワクチン接種後7ヶ月で抗体価は大きく減衰している ~

感染制御プロジェクトの小原道法特別客員研究員らは、東京都の依頼に基づき、都立病院関係者の検体(血清)を用いて、新型コロナウイルスワクチン接種後7か月程度経過した方の抗体を測定しました。

実施概要

測定対象

  • ファイザー社製mRNAワクチン2回接種終了後7ヶ月程度経過し、同意を得られた都立病院関係者。
  • 都立病院関係者から検体(血清)の提供を受け、主に20才代から70才代までの1,139人の検体を用いた(図1)。

測定方法

  • 測定は新型コロナウイルスの表面蛋白質であるスパイク蛋白質(S1)に結合する抗体とウイルスの感染を防ぐ効果の有る中和抗体について、精密測定系(化学発光免疫測定系:CLIA等)を用いて実施。
COVID-19抗体検査

測定結果のポイント

  • スパイク蛋白質結合抗体価(S1-IgG)の平均値は176AU/mL(Arbitrary Units per mL:抗体の濃度を示す任意の単位。)で、年齢が高くなるに伴って低い値となりました(図2)。
  • この抗体価は、当研究所が保有している22例の2回目ワクチン接種2-4週間後の抗体価の平均値2608AU/mLと比較すると1/14.8と低いものでした(図3)。
  • 中和抗体価(Nab)の平均値は55.8AU/mLで、年齢が高くなるに伴って低い値となり、当研究所が保有している15例の2回目ワクチン接種2-3週間後の抗体価の平均値729AU/mLと比較すると1/13に低下していました(図4、図5)。
  • これらの抗体測定には流行初期株のスパイク蛋白質抗原が用いられています。現在流行の主体となっているデルタ株に対しては、中和抗体の効果が減少する可能性が示唆されます。
(図1)抗体価の測定は、都立病院関係者から検体(血清)の提供を受け、主に20才代から70才代までの1,139人の検体を用いています。
(図1)検体情報
(図2)測定結果はスパイク蛋白質結合抗体価の平均値は176AU/mLで、年齢が高くなるに伴って低い値となりました。
(図2)
※20-30代には10代1名、60-70代には80代1名を含む。
(図3)この抗体価は2回目ワクチン接種2-4週間後の抗体価の平均値2608AU/mLと比較すると1/14.8と低いものでした。
(図3)
(図4)中和抗体価の平均値は55.8AU/mLで、スパイク蛋白質結合抗体価と同様に年齢が高くなるに伴って低い値となりました。
(図4)
(図5)この中和抗体価は2回目ワクチン接種2-3週間後の抗体価の平均値729AU/mLと比較すると1/13に低下し,抗体陰性率は7.5%になっていました。
(図5)

<用語解説>

1.S1-IgG:
ワクチンはS蛋白質を産生しているのでワクチンにより誘導された抗体価を示しています。S1抗原に結合する抗体がある事で、ワクチンに対して被接種者の免疫が反応した程度を示しています。この抗体の中にウイルス中和抗体も含まれています。10AU/mL以上が抗体陽性となります。
2.Nab(Neutralizing antibody):
ワクチンにより産生されたウイルス中和抗体価を示しています。感染防御に働く抗体です。10AU/mL以上が抗体陽性となります。

◆上記の公表に伴う東京iCDC専門家ボード座長コメントについて(東京都公式サイトより)

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