笠原 浩二(学術支援室)
第43回サイエンスカフェin上北沢「身の回りのものを使って、虹色を作ろう!―酸性?アルカリ性?―」を幹細胞プロジェクトの江川優花さん、長谷部愛佳さん、船田淳太さんと一緒に事務局普及広報係の協力のもとで行いました。夏休み中の猛暑日が続くなか3年振りに対面式で行われ、当研究所 講堂に多くの小学生の皆さんと保護者様方が来てくださいました。「水溶液、pHとは何か?」についてイントロダクションを行い、身近にあるものを使った7種類の無色透明の水溶液のpHの違いをpH試験紙を使って調べました。休憩とティータイムの後、小学生の皆さんに紫キャベツを細かくハサミで切ってもらい、水を加え電子レンジで加熱することで天然色素であるアントシアニンを抽出しました。そして、大学院生スタッフの指導のもとで抽出液を一人一人スポイトで水溶液に加えてもらい、pHにより違った色に変わることを観察しました。色が鮮やかに変わったときには、皆さん目を輝かせていました。まとめとして、サンプル成分の解説、アントシアニンが含まれる果物や野菜とその意義、身体の中におけるpHの重要性についてお話し、最後にご自宅での自由研究として紫キャベツ実験をする際の方法と注意点について解説し、用意したpH試験紙と紫キャベツ抽出液を皆さんに持って帰っていただきました。「楽しかったので、また参加したい。」「勉強になって面白かった。」などの感想をいただきました。
2023/6/9 開催
第2回都医学研都民講座 ハイブリッド方式
6月9日(金曜日)、当研究所では、「基礎医学からみたパーキンソン病」と題して、第2回都医学研都民講座をハイブリッド方式で開催しました。今回は、生理学研究所名誉教授の南部篤先生を講師にお迎えしました。
パーキンソン病は、手足の振るえ、動かしにくさ、強張り等の運動症状に加え、睡眠障害や便秘等を示す神経難病です。そして、日本における患者数は、60歳以上になると、100人に1人といわれ、発症する人が多いことから、大きな問題となっています。パーキンソン病の発症原因は、脳内で神経伝達物質として働くドーパミンという物質が減少することです。先生は、ドーパミンが減少した結果、脳にどのような変調を来し、どのようなメカニズムで症状が出るのかについて、実験・研究をしてきたそうです。その結果、これらの変調を修正すると症状が軽減することもわかってきたとのことでした。また、パーキンソン病の発症初期の治療は、薬物療法が中心となり、70歳から75歳まではL-ドーパ、70歳以下はドーパミンアゴニストが用いられます。ただし、薬物療法には副作用もあり、身体が勝手に動いてしまう不随意運動が現れることがあります。さらに、進行期になると、脳内の異常が発生している箇所に対し、電極を入れて電気を流して壊す脳深部刺激療法と呼ばれる脳外科的治療法が行われることがあるとお話しいただきました。
講演後のアンケートでは、「父がパーキンソン病なので受講しました。メカニズムや治療の現状がわかりやすかったです。研究によって、より安全で効果的な治療法ができると嬉しいです。」「パーキンソン病の仕組みや治療について教えていただき、病態がイメージしやすくなりました。」といった御意見を多く頂きました。
2023/4/27 開催
第1回都医学研都民講座 オンライン開催
4月27日(木曜日)、当研究所では、「遺伝性神経疾患におけるカルパイン制御について」と題して、第1回都医学研都民講座をハイブリッド方式で開催しました。今回は、福井大学学術研究院医学系部門教授の山田雅己先生を講師にお迎えしました。
まず、当研究所カルパインプロジェクトの小野弥子プロジェクトリーダーから、「カルパインの働きと疾患」と題してお話ししました。カルパインは、細胞内に存在するタンパク質について、その形を整えるかのように切り分け、タンパク質がきちんと機能するように助けるもので、いわばタンパク質の働きを調節しているものであるといえます。このカルパインの働きを上手く制御できないと、その結果として症状が悪化するとされている神経変性疾患は数多くあり、具体的には、アルツハイマー病、パーキンソン病やてんかん等が挙げられます。そして、カルパインの働きを制御することで、これらの疾患の病態を改善することを目的に、世界中でカルパイン阻害剤の開発が進められているとお話ししました。
続いて、山田先生から、「『脳のシワ』が無い病気、滑脳症とは?」と題してお話しいただきました。滑脳症は、一般的に脳のシワと呼ばれる脳回や脳溝がないことが特徴で、臨床症状としては、精神遅滞やけいれん等の重い症状がみられ、現状では根本的な治療方法はありません。この滑脳症の発症は神経細胞の移動障害に起因するといわれ、複数の原因遺伝子が報告されています。その中で、Lis1の遺伝子変異は滑脳症全体の6割を占め、Lis1タンパク質の減少を引き起こします。先生は、Lis1タンパク質の減少により移動障害が発生するには、何らかのタンパク質分解酵素が原因なのではないかと考えて研究を進め、それがカルパインであることを明らかにしました。そのため、先生は、カルパインの働きを妨げる阻害薬に注目されており、実験ではそのような薬剤を用いることで、運動能力や記憶・学習効果の回復・改善が見られたということをお話しいただきました。
講演後のアンケートでは、「滑脳症の子供がいるため興味があり参加しました。有効な治療法が早く見つかると良いなと思います。」といった御意見を多く頂きました。
小野弥子プロジェクトリーダー
山田雅己先生