体内時計プロジェクト 主任研究員 乙部 優太
プロジェクトリーダー 吉種 光
体内時計プロジェクトの乙部優太研究員と吉種光プロジェクトリーダーらは、次世代質量分析装置「Orbitrap Astral」を用いて、マウスの 32 の臓器や脳領域におけるタンパク質量とリン酸化状態の 24 時間変動を解析し、「マウス概日時計プロテオームアトラス」という包括的なデータベースを作成しました。
本研究成果は、2026 年1月 10 日午前1時(日本時間)に、米国 Cell Press 社の国際科学誌「Molecular Cell」のオンライン版に掲載されました。
本研究で構築した、「マウス体内時計プロテオーム地図」はマウスの全タンパク質の約 74% の量の時刻変動を網羅的に記述した、世界でも類を見ない規模のリソースデータです。このデータはウェブサイトで一般公開されており、「いつ、どこで、どのタンパク質が」働いているのかを誰でも簡単に調べることができます。
これらのデータから、タンパク質の働きは mRNA(遺伝情報)の量だけでは説明できないことや、タンパク質の「量」だけでなく「場所」が時刻によって変化すること、さらにタンパク質のリン酸化(機能調節)も時間とともに大きく変動することが明らかになりました。特に、これまで解析が難しかった小さな脳の領域についても、多くのタンパク質の時刻変動が解明されました。
また、ヒトの睡眠障害に関わる遺伝子変異を持つマウスの解析から、遺伝子のわずかな変化が全身のタンパク質の状態に広範な影響を与え、体内時計の乱れがさまざまな病気につながるメカニズム解明の手がかりとなる可能性が示されました。
この「体内時計地図」は、睡眠障害や生活習慣病などの原因解明や、薬の効果を最大限に引き出し副作用を減らす、「時間治療(クロノセラピー)」の発展に大きく貢献すると期待されています。薬をいつ投与すれば最も効果的か、副作用を抑えられるかといった、より精密な治療法の開発に役立つでしょう。