こどもの脳プロジェクトリーダー 佐久間 啓
今回のサイエンスカフェ「小児科医が教える人の体のしくみ」は、「心臓と循環」「肺と呼吸」をテーマに、大人から子どもまでが楽しみながら人体の不思議を学ぶ貴重な機会となりました。飲食も可能なリラックスした雰囲気の中、イラストやクイズを交えながら私たちの身近な体の仕組みについて深く掘り下げました。
大学の医学部では、まずは健康な状態での体の働きについて学び、その後に病気について学びます。この講演ではこのような医学の教育プロセスを身近に体験することができると説明しました。
講演ではまず、「心」と「心臓」の違いについて解説しました。「心」が感情を司る脳の働きであるのに対し、「心臓」は血液を全身に送り出すポンプとしての臓器です。心臓は絶えず収縮と拡張を繰り返し、血液を体中に循環させています。心拍数は体の大きさに応じて変化し、小さな動物ほど速く、人間でも子どもと大人では異なります。
心臓内部は 4 つの部屋に分かれ、血液は「体循環」と「肺循環」の二つのルートを通ります。酸素を豊富に含む血液と、酸素が少なくなった血液が心臓内で混ざらないよう、巧妙に分離されて流れる仕組みになっています。
血液が心臓から出ていく血管は「動脈」、心臓に戻る血管は「静脈」と呼ばれます。動脈は心臓の強い圧力に耐えるため壁が厚く、静脈には血液の逆流を防ぐ弁が備わっています。また、心臓の中にも弁があり、血液が一方向に流れるようコントロールしています。
驚くべきことに、心臓は脳からの命令がなくても自ら電気信号を発して拍動しています。この電気信号を記録したものが心電図であり、心臓の健康状態や不整脈などの異常を把握するのに役立ちます。
お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんの心臓は、生まれた後とは異なる特別な血液の流れ方をしていることや、生まれつきの心臓病(先天性心疾患)についても解説しました。
次に、肺と呼吸の仕組みについて学びました。のどの奥では空気が通る「気管」と、食べ物が通る「食道」が分かれていますが、誤嚥を防ぐために「喉頭蓋」が飲み込む際に気管を閉じる役割を果たしています。
肺には「肺胞」という小さな袋が多数あり、ここで酸素を取り込み二酸化炭素を排出する「ガス交換」が行われます。肺自体には筋肉がないため、胸郭と横隔膜の動きによって空気の出し入れが行われます。私たちは酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出するために呼吸をしています。吸う空気と吐く空気では酸素や二酸化炭素の量が異なり、植物や私たちの細胞一つ一つも「細胞呼吸」によってエネルギーを作り出しています。息苦しさの主な原因は、酸素不足よりも体内の二酸化炭素量の増加にあると説明しました。
赤ちゃんが初めて呼吸する際には、肺の中の羊水が空気と入れ替わり、「サーファクタント」という物質が肺の膨張を助けます。この物質が不足する早産児には、サーファクタントを薬として補充するという治療が施されることも紹介しました。
病気とは、体が本来持つ「正常な働き」が何らかの原因でうまくいかなくなった状態であり、健康な時の体の働きを知ることが病気を正しく理解し、適切な治療法を選択するための最も重要な基本であり、この講演が皆さんの体への理解を深め、健康に過ごすための一助となれば幸いです。