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先天性奇形症候群の発症に関わる酵素「カルパイン15(CAPN15)」
が、細胞同士の接着を調節する役割を担うことを発見
カルパイングループ研究員(当時) 野口 あや
カルパイングループリーダー(当時) 秦 勝志
当研究所カルパイングループの野口あや研究員(現・脳神経回路形成プロジェクト)、秦勝志リーダー(現・品質管理プロジェクト・主席研究員)、小野弥子前リーダー(現・埼玉医科大学准教授)は、当研究所基盤技術支援センター遺伝子改変動物室の設樂浩志室長、東京大学医科学研究所の佐伯泰教授、順天堂大学の土屋光准教授と共同で、細胞内タンパク質切断酵素であるカルパイン 15(CAPN15)が、ユビキチン修飾されたタンパク質を標的とする特性を持ち、細胞同士をつなぐ接着分子「E- カドヘリン」を制御することを明らかにしました。CAPN15 の異常は先天性奇形症候群の原因となることが知られており、本研究はその発症メカニズムの理解につながることが期待されます。
本研究成果は、米国科学雑誌 Journal of Biological Chemistry にオンライン掲載されました。
体の形づくりに大切な接着剤の働きを調節する新しい酵素を発見!
~この酵素の異常を原因とする先天性疾患の発症メカニズム解明や治療法開発に貢献できる可能性~
【研究のポイント】
- CAPN15 という酵素の新しい役割を発見! CAPN15 は、細胞内で働く「カルパイン」と呼ばれるタンパク質切断群の一種です。CAPN15 はタンパク質の分解や機能調節の目印(タグ)となる「ユビキチン」を認識できるユニークな性質を持つことが知られていましたが、その具体的な役割は不明でした。今回の研究で、CAPN15 がユビキチンを目印として、細胞同士をつなぐ重要な接着分子「E- カドヘリン」を選択的に切断し、その量を適切に調節していることが初めて明らかになりました(図)。
- 細胞の「密集しすぎ」を防ぐ大切な働き もし CAPN15 が正常に働かないと、E- カドヘリンが過剰に蓄積し、細胞同士が過度に密集してしまうことが分かりました。これは、体の形づくり(発生)において重要なバランスが崩れることを意味します。実際に、CAPN15 が作られないマウスでは、生まれつき様々な異常が観察されました。
- 先天性疾患「OGIN」の理解へ 近年、CAPN15 の異常が「Oculogastrointestinal neurodevelopmental syndrome(OGIN)」という先天性奇形症候群の原因となることが報告されています。本研究の成果は、この疾患がどのようにして引き起こされるのか、その分子メカニズムの理解を深める重要な手がかりとなります。
【研究の意義・今後の展望】
私たちの体は、細胞が適切に結びつくことで臓器や組織としての形と機能を保っています。CAPN15 が E- カドヘリンという接着分子の量を調節するという今回の発見は、細胞がどのようにして適切な形や構造を維持しているのかを理解する上で重要な発見です。
本研究は、OGIN の発症メカニズムの理解を深めるとともに、新たな治療法の開発に向けた基盤となることが期待されます。
【論文】
- Noguchi A, Tsuchiya H, Shitara H, Saeki Y, Ono Y, Hata S. CAPN15 is a non-proteasomal, ubiquitin-directed calpain protease that regulates cell adhesion by cleaving E-cadherin. J Biol Chem. 2026 Jan;302(1):111034. doi: 10.1016/j.jbc.2025.111034. Epub 2025 Dec 9.