当研究所感染制御プロジェクトの小原道法特別客員研究員と糸川昌成副所長らは、都立病院・(公財)東京都保健医療公社14病院の外来受診者の検査終了後の余剰検体を用いて、新型コロナウイルスの抗体を測定しました。測定は2020年9月1日から2021年3月31日にわたって実施され、延べ23,234人の検体を用いて抗体陽性率が解析されました。
2021年3月末までの年齢・性別・地域を補正した抗体陽性率は3.4%でした。今回解析したのは一般外来診療科の余剰検体のため、発熱外来や陽性者を除外した無症状者が対象です。したがって、無症状のまま過去に新型コロナウイルスの感染が示唆された都民は470,778人(95% CI: 361,100人-841,226人)いた計算になり、この人数はPCR検査の陽性者として発表されていた都民の3.9倍にあたります。本研究は、東京都特別研究の研究助成により実施しました。
この研究成果は、2021年11月13日(土曜日)3時(日本時間)に英文誌『Journal of Epidemiology』にオンライン掲載されました。
新型コロナウイルス感染症ではPCR法や抗体測定が感染の判定に用いられていますが、潜伏期間の存在や偽陰性など、感染が見落とされる可能性があります。本研究では、新型コロナウイルス感染の東京都における疫学的性質を明らかにするために、都立病院・(公財)東京都保健医療公社14病院すべてと初めて連携することで(図1)、23,000名超の血清検体を用いてiFlash3000(YHLO社)で無症状者の血中のIgG抗体の量を測定しました。
測定は2020年9月1日から2021年3月31日にわたって実施され、延べ23,234人の検体を用いて抗体陽性率が解析されました。
2021年3月末までの年齢・性別・地域を補正した抗体陽性は3.4%でした。今回解析したのは一般外来診療科の余剰検体のため、発熱外来やコロナ陽性者を除外した無症状者が対象です。したがって、無症状のまま過去に新型コロナの感染が示唆される都民は470,778人(3.4%)いた計算になり、この人数はPCR検査陽性者として発表されている都民の3.9倍にあたります(図2)。
日本ではクラスター感染を把握する感染者追跡に主眼が置かれていましたが、こうした追跡はパンデミックの初期には有効と考えられています。しかし、感染がかなり拡大した時期には、すべての感染者を追跡することが困難となります。今回の研究でPCR検査の新規陽性者数を4倍近く上回る無症状の感染者が広がっていたことが明らかとなったことから、当初行われていた感染追跡の有効性低下が示唆されました。