開催報告

第25回 都医学研国際シンポジウム(2023年10月16日 開催)
on Cells and Chromosomes


ゲノム動態プロジェクトリーダー 笹沼 博之

去る 2023年 10月 16日、国際シンポジウムが開催されました。本シンポジウムは、先だって行われた島根県松江市で開かれたコールドスプリングハーバーアジア主催の「Yeast and Life Sciences」ミーティングに来日した著名な研究者を招待する形で行われました。国際シンポジウムでは、酵母研究からヒト、個体研究とまるで進化の系譜を辿るかのような非常に興味深い研究成果の発表が続きました。

Remus 教授(Sloan Kettering 研究所)は、DNA 複製フォークがその進行の障害となる DNA 構造をどのように認識して乗り越えるかを生化学的に解析した結果を発表しました。Qing Li 教授(北京大学)は、細胞増殖に伴って合成される DNA 分子に巻き付いているヒストン分子の分配に関わる研究を報告しました。Remus 教授と Li 教授は、PI になってまだ 10 年ほどの新進気鋭の研究者であり、すでに教科書に記載される可能性のある発見を発表しており、このシンポジウムを通して議論できたことは大変な収穫でした。また Foiani 教授(イタリア iFOM 研究所前所長)の発表は印象的でした。Foiani 教授は、細胞の物理的なストレスの応答に関する研究でした。癌細胞は、密に存在する正常細胞を押し除けながら(物理的ストレスを受けながら)、固形腫瘍を形成しています。Foiani 教授の発表では、物理的なストレスを感じながら増殖する細胞には、 DNA 損傷が発生していること、また、がん形質をより獲得しやすいことを示していました。

シンポジウム中に活発な議論が展開されている様子を見ると、コロナ禍で断絶されていた対面での研究者間の交流活動が再開されたことを実感できました。特に医学研外の研究者の参加も多く、異なる分野の方々との交流ができたことは、新たな発見や刺激を受けることができ、非常に有意義な時間でした。シンポジウム終了後に開催された懇親会では、招待講演者だけでなく学生さんも加わり、ざっくばらんな雰囲気で交流を深めることができました。

集合写真
集合写真