難病ケア看護ユニットリーダー 中山 優季
私たち難病ケア看護ユニットは、日ごろより難病当事者やその支援者の方々とご一緒しながら、多くのお声を伺います。その声の中で一番大きいのは、やはり、「治りたい」です。筋萎縮性側索硬化症 ALS は、19 世紀にシャルコーによって発見されて以来、150 年余にわたり、なすすべない状態が続いています。しかし、近年「治りたい」の声に、呼応するように、着実な成果がみられています。それを届けたいという思いでこの企画に取り組みました。上梓されたばかりの日本神経学会「ALS 診療ガイドライン 2023」のガイドライン作成委員会をご一緒しながら、ALS の研究、治療の最前線に触れることができたことにより、委員の先生方にご登壇をお願いできたことは望外の喜びです。
また実は、都医学研には、「治る」ための第一歩として、原因タンパクである TDP-43 を発見された長谷川 成人先生がおられます。今回、TDP-43 の構造解析に成功された病態研究の最前線をご紹介いただきました。次に、東北大学の青木 正志先生から、家族性 ALS に対する患者iPS 由来の細胞モデルによる治療薬の研究の実際を、続いて、滋賀医科大学の漆谷 真先生から、TDP-43 を凝集する病的モデルと TDP-43 を特異的に認識する抗体を作製した免疫療法の最前線、そして、愛知医科大学の熱田 直樹先生から、JaCALS(Japanese Consortium for ALS Research)というレジストリを用いた研究をご紹介いただきました。
後半では、徳島大学の和泉 唯信先生から、ALS の臨床研究と新たな介入・治療法、次いで、東邦大学の狩野 修先生から、予後延長効果のみられた多職種ケアの実際、それから、都立神経病院の清水 俊夫先生から ALS における栄養療法、最後に中山からケアからわかった知見としての非運動症状についてご紹介しました。対面、オンラインをあわせ 183名の申し込みを得て実施することができ、基礎研究から臨床研究へ、そして臨床研究から基礎研究へのつながりをしっかりと感じることができ、ご登壇くださった先生方、ご参加くださったすべての方に感謝申し上げます。