開催報告

2025年度 第4回 都医学研都民講座(2025年9月19日(金)開催)
認知症の新しい取組み2025


副所長・認知症研究プロジェクト長谷川 成人

長谷川副所長photo
副所長・認知症研究プロジェクト
長谷川 成人

2025年9月19日(金)、社会医療法人崇徳会 田宮病院顧問で長岡崇徳大学特任教授の森啓先生を講師にお招きし、第4回都民講座「認知症の新しい取り組み 2025」が開催されました。今回は、2024 年に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法(通称・認知症基本法)」の理念と意義を中心に、法律の成立はゴールではなく、魂を吹き込むのは国民一人ひとりの理解と行動であることの重要性についてお話していただきました。

講演では、アルツハイマー病の基礎的理解と最新の医療研究について紹介され、脳内のアミロイドβの蓄積が発症の 20 年以上前から始まり、脳が徐々に萎縮して進行する病気であること、2024 年にはアミロイドβを減らす新薬レカネマブやドナネマブが承認されたこと、病気の進行を遅らせる効果が認められた一方で、副作用や高額な医療費などの課題についてもお話されました。

森啓特任教授photo
社会医療法人崇徳会田宮病院 顧問
学校法人悠久崇徳学園
長岡崇徳大学 森 啓 特任教授

続いて、認知症基本法成立の経緯に話が移りました。これまで国の施策は省庁主導のプランにとどまり、法的裏付けがなかったところに、認知症の人と家族を社会全体で支える仕組みの必要性を痛感し、議員や厚労省関係者への働きかけを重ねたことなど、森先生しか知らないようなお話をしていただきました。過去の痛ましい出来事を例に挙げ、「家族だけに介護の責任を押し付けるのではなく、社会全体で支え合う」という考え方が、いかにしてこの法律に結びついたかを熱く語ってくださいました。これは、国民の願いが込められた、大変意味深い法律だと感じます。成立の陰には、政治的な功名を求めず、地道に調整を続けた議員や官僚たちの努力があったことを付け加えられました。

法律の理念として掲げられるのは「新しい認知症観」で、認知症になっても、その人の個性と尊厳を尊重し、地域のつながりの中で自分らしく生き続けられる社会を目指すという考え方が重要であると強調し、社会全体で支え合う共生の仕組みが不可欠だと訴えられました。

最後に、講師は「私たちが日本に生まれてよかったと思える社会はまだ遠いが、この法律を理解し努力することで必ず実現できる」と話を結びました。本講演は、医療・法律・倫理の各側面から認知症を考え直し、共に生きる社会への一歩を促す貴重な機会となったと思います。

講演の様子photo
神経細胞(ニューロン)の構造とネットワークの画像を基に、脳機能のメカニズムについて説明される森特任教授