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演者 | 吉種 光 東京大学大学院 理学研究科 理学部 助教 |
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会場 | オンライン(Zoom) |
日時 | 2020年10月19日(月曜日)15:00~ |
世話人 | 正井 久雄 所長 |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
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研究推進課 普及広報係 電話 03-5316-3109 |
地球上で生活する生物には、様々な生理機能に約24時間周期のリズム性が観察され、これは細胞に内在する自律的な振動体「概日時計」により駆動されている。概日時計は時計遺伝子の転写フィードバック制御を基本骨格とすると考えられ、2017年にはノーベル生理学・医学賞が与えられた。しかしこのモデルは本当に正しいのだろうか。転写フィードバック制御は時計の振動を外部に伝えるいわば時計の針としての役割を担っており、時計タンパク質のダイナミクスが時計のクオーツとして機能しているのではないか、と我々は考えている。つまり、一群の時計タンパク質の相互作用や立体構造変化、翻訳後修飾状態の組み合わせが時計振動の本体であると考え、この新しい概念を「Circadian quartz(概日クオーツ)」と定義し、その実体解明を目指している。
時計振動の本体に迫る基礎研究と並行して、時計の意義を理解するために「老化」をキーワードに応用研究を推進している。時計遺伝子の変異や不規則な生活により体内時計を撹乱すると個体の様々な機能が低下するが、この症状は加齢に伴う老化現象と酷似している。加齢に伴う体内時計の異常を「clock aging(時計老化)」と定義し、加齢に伴う個体の機能低下の一部は時計老化によるリズム出力異常である、という作業仮説を立て、その実態の理解を目指している。