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演者 | 上田 泰己 東京大学大学院 医学系研究科 システムズ薬理学教室 教授 理化学研究所 生命機能科学研究センター 合成生物学研究チーム チームリーダー |
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会場 | オンライン(Zoom) |
日時 | 2021年5月20日(木曜日)16:00~ |
世話人 | 吉種 光 体内時計プロジェクトリーダー |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話 03-5316-3109 |
我々は、眠気を記録している実体を明らかにするために分子活性の変動そのものが睡眠覚醒リズムを支配すると考え、哺乳類の睡眠(特にノンレム睡眠)について、神経細胞の活動パターンを直接担うイオンチャネル・ポンプについて、ノンレム睡眠時の神経活動の数理モデリングと、マウス睡眠表現型のスクリーニングシステム(SSS法)、独自に改良したCRISPRを用いたノックアウトマウス作製技術(Triple-CRISPR法)を用いて、細胞内Ca2+動態に直接関与する一連のイオンチャネル・ポンプが睡眠時間制御に重要であることを見出してきた。さらに細胞内Ca2+が制御するリン酸化酵素に着目しCamk2a/bノックアウトマウスが著明な睡眠時間の短縮を示すことを明らかにした。これはCaMKIIα/βが睡眠を誘導するリン酸化酵素であることを意味する。我々は睡眠誘導性リン酸化酵素 CaMKIIα/βの発見を元に、神経細胞の興奮持続やエネルギーの枯渇、外的環境変化によるストレスなどの細胞状態・個体状態の履歴をリン酸化を中心とした分子修飾として統合・記録し、神経細胞の興奮性の低下、代謝活動の制御、ストレスによる細胞障害の修復を誘導する睡眠のリン酸化仮説を提唱するに至った。本講演では、動物を用いた睡眠研究の現在を解説するとともに、ヒトにおける睡眠研究の現在や未来のヒトシステム生物学の実現に向けた試みについても議論したい。
References: 1.Isojima et al, PNAS, 106(37):15744-9 (2009), 2. Susaki et al. Cell, 157(3): 726–39, (2014), 3. Tainaka et al. Cell, 159(6):911-24(2014), 4. Sunagawa et al, Cell Reports, 14(3):662-77 (2016), 5. Ode et al, Molecular Cell, 65, 176–190 (2017), 6. Shinohara et al, Molecular Cell. 67, 783-798 (2017), 7. Ukai et al, Nat. Protoc. 12, 2513-2530 (2017), 8. Niwa et al, Cell report, 24, 2231–2247 (2018).