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『老化と健康』
眠り、腸内細菌、フレイル予防、食、そしてAl…健康な長寿を目指して

第7回 フレイルのメカニズムから考える予防法とは?

演者 重本 和宏
東京都健康長寿医療センター研究所
開催方式 オンライン(Zoom)
日時 2024年5月17日(金曜日)15:00~
※講演は1時間程度を予定しています。
世話人 正井久雄
所長
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
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お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話 03-5316-3109

講演要旨

サルコペニア・フレイルのメカニズムから考える予防法とは?

2022年の人口推計によると、65歳以上の高齢者人口は3627万人で過去最多となり総人口の29.1%を占めており、75歳以上は15%を超えた。2040年には35.3%になると予想される。海外においても健康長寿の延伸を目指した老化に関わる基礎研究の重要性は年々高まっている。認知症を除いては、これまで医学的な「老化」の定義は曖昧であったが、近年、サルコペニアとフレイルの医学的な定義が提唱された。多くの疫学研究が示しているように、適切な生活習慣(運動習慣、食事・栄養管理、睡眠)がなぜサルコペニア・フレイルの予防に有効であるか、その機序を基礎研究で明らかにすることが重要である。また、サルコペニア・フレイルの進行に個体差が生じる機序も大切な研究課題である。今施行されているサルコペニア・フレイルの診断基準および介入方法の多くは、ヒトを対象とした疫学的研究から科学的根拠を得ている。 一方、様々な疾患の診断基準および薬物療法を含む治療法は、基礎研究の成果を基にした科学的根拠を拠り所にしており、症状改善だけでなく病理学的エビデンスに基づき診断や治療の有効性が評価されるが、サルコペニア・フレイルについてはまだ確立されていない。

2016年にサルコペニアが国際疾病分類(ICD10)に認定され、骨格筋量の減少よりも骨格筋の質的変化、特に筋力や身体活動の機能低下に着目した新しい診断基準(AWGS2019)が発表された。骨格筋量の低下が伴うサルコペニアの診断が確定する前から、すなわち骨格筋量の減少は未だ顕著ではないが質的変化が起きる段階から介入することが必要である。骨格筋は運動機能だけでなく生体内で体温維持、栄養の保存・供給と調節、代謝機能の調節などさまざまな重要な機能を果たしている。 加齢に伴い調節機能が低下する。運動時に収縮力を産生する骨格筋は筋収縮だけでなく代謝と熱産生の役割も担うが、この3つの役割は筋収縮を担う筋線維タイプの構成と機能に密接に関係する。 筋線維は遅筋線維と速筋線維からなり収縮能力と代謝特性が異なる(ヒトは3種類、げっ歯類は4種類)。 そして運動習慣やトレーニングの違い(有酸素運動、レジスタンス運動)により、筋線維タイプはある程度可逆的に変化する。筋線維タイプ変化に伴いミトコンドリアの形態および筋線維周囲の毛細血管が変化することが明らかとなった。 サルコペニアの予防・早期診断には客観的なバイオマーカーの開発が必要である。骨格筋線維と運動神経のつなぎ目である神経筋シナプスの研究から血中MuSKがバイオマーカーとして利用できる可能性を見出した。