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GTP代謝研究 -GTPセンサーの発見から進化まで-

演者 千田 俊哉
高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 教授
構造生物学研究センター センター長
会場 対面式(2BC会議室)
日時 2025年10月9日(木曜日)16:00~17:00
世話人 野中 隆
認知症研究プロジェクト
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話 03-5316-3109

講演要旨

GTPは、ATPと同じように細胞内のエネルギー分子であり、タンパク質合成、細胞運動、細胞内輸送などに利用されており、主に同化作用に関わっていると考えられてきた。私たちGTP代謝研究グループ(GTP Geeks)は、10年以上にわたり、細胞生物学、オミクス、生化学、バイオインフォマティクス、分子進化、ウイルス学、構造生物学を含む学際的なアプローチを採用してGTP代謝を研究してきた。その結果、これまでに、細胞内のGTPセンサーであるPI5P4Kβを発見し(Mol. Cell 2016)、がんの成長との関連性を示してきた(Nat. Cell Biol. 2019)。さらに、 GTPセンサーの下流の経路の解析も行い、細胞内GTP濃度は同化作用だけでなく、PI5P4Kβを通じて異化作用とも関係していることがわかってきた。さらに、この結果からPI5P4Kβとウイルス感染の関係も明らかになりつつある。また、PI5P4KβはGTPを主としてリン酸供与体として使う極めて珍しいリン酸化酵素である。そこで、どのように基質特異性をATP からGTPへと変化させてきたのか、その進化を調べることで(Structure, 2022)、GTP代謝の進化が脊椎動物の進化に及ぼした影響に関しても興味深いことがわかってきた。本セミナーでは、我々のGTP研究の進展に関して概説したい。