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解糖系由来の反応性副産物から紐解くパーキンソン病の新しい発症メカニズム

演者 松田 憲之
東京科学大学 総合研究院 難治疾患研究所 機能分子病態学分野
教授
会場 対面式(2BC 会議室)
日時 2026 年2月19日(木曜日)15:00~16:00
世話人 山野 晃史
品質管理プロジェクト
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話 03-5316-3109

講演要旨

我々は、生化学的な手法を駆使して PINK1, Parkin, DJ-1 などの遺伝性潜性パーキンソン病の原因遺伝子産物の機能を解析してきた。そして、これまでに PINK1 がユビキチンリン酸化酵素であること、 Parkin がリン酸化ユビキチンによって活性化されるユビキチン連結酵素であること、などを明らかにしてきた。その一方で、DJ-1 の分子機能については多様な説が提唱されているけれども(PubMed の関連論文数は 2000 報を超える)、いまだその分子機能は十分に解明されていない。

DJ-1 の立体構造からは、DJ-1 が Cys106 を求核基とする加水分解酵素である可能性が示唆される。我々も、2015 年頃から DJ-1 が加水分解酵素である可能性を追究してきたが(Matsuda, Sci Rep, 2017; Watanabe, JBC, 2024)、kcat/Kmから推察される酵素活性の低さや、その機能の進化的保存性の乏しさなど、いくつかの課題を抱えていた。しかしながら、最近の研究成果は、DJ-1 が「解糖系から生じる反応性カルボニル化合物 cyclic 3-phosphoglyceric anhydride (cPGA)の加水分解酵素として機能する」ことを明確に示している(Watanabe, JCB, 2025)。

本セミナーでは、Guido Bommer 博士らの先駆的な研究にも触れつつ、cPGA と結合した DJ-1 のシミュレーション解析の結果や、我々が得た最新の生化学的解析の成果を紹介する。そして、これらの知見から推定される DJ-1 の真の分子機能や、新たなパーキンソン病の発症機構について考察したい。