| 演者 | 古屋敷 智之 東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 薬理学分野 教授 |
|---|---|
| 会場 | ハイブリッド(講堂+Zoom) |
| 日時 | 2026 年2月25日(水曜日)16:30~17:30 |
| 世話人 | 井手 聡一郎 依存性物質プロジェクト |
| 参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
| お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話 03-5316-3109 |
侵害刺激や過酷な環境によるストレスは、うつ病や認知症を含む精神・神経疾患のリスクを高めることが知られているが、その生物学的基盤には不明な点が多い。この問題に迫るため、我々は、マウスの社会ストレスモデルを用いた研究を行ってきた。その結果、急性ストレスが前頭前皮質においてドパミン応答を介して神経細胞の樹状突起を増生させ、ストレス耐性を高めることを明らかにした。一方、慢性ストレスは自然免疫受容体を介してミクログリアを活性化し、前頭前皮質におけるドパミン応答の抑制、神経細胞の樹状突起の退縮、さらには行動変容を促進することを示した。さらに、慢性ストレスが骨髄由来の好中球や単球を動員し、末梢炎症を介して行動変容を引き起こすことも明らかにした。これらの結果は、精神・神経疾患において、ストレスに起因する脳および末梢の炎症反応とその相互作用が重要な役割を果たすことを示唆する。しかし、ストレスに伴う炎症反応がどのように脳機能の変容を引き起こすのか、そのプロセスはいまだ明らかでない。本講演では、シングルセル・マルチオーム解析や全脳イメージングを用いた最新のストレス研究の知見を紹介しつつ、ストレス関連疾患の病態解明と克服に向けた展望を議論したい。