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⾃閉スペクトラム症から読み解く脳の発達と社会性の神経基盤

演者 ⾅井 紀好
新潟⼤学⼤学院医⻭学総合研究科 脳機能形態学分野
教授
会場 対面式(講堂)
日時 2026 年2月2日(⽉曜日)16:00~17:00
世話人 ⿃海 和也
統合失調症プロジェクト
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話 03-5316-3109

講演要旨

⾃閉スペクトラム症(ASD)は、社会性コミュニケーションの障がい、限定的・反復的な⾏動や興味、ならびに感覚過敏や感覚鈍⿇を特徴とする神経発達症である。ASD は遺伝要因、環境要因、あるいはその相互作⽤によって発症すると考えられているが、その病態メカニズムには依然として未解明な点が多い。我々はこれまで、動物モデルを⽤いた ASD 原因遺伝⼦の機能解析を通じて、脳の発⽣・発達および病態形成に与える影響を個体レベルで明らかにしてきた。⼀⽅で、ヒト末梢⾎を⽤いたメタボローム解析により、ASD 児における脂質代謝異常が社会性と関連することを⾒出してきた。近年は、基礎研究からトランスレーショナル研究に⾄るまで、多⾯的なアプローチから ASD の⽣物学的メカニズム、ならびに脳の発⽣・発達と社会性の神経基盤の理解を⽬指している。

本セミナーでは、主に基礎研究を中⼼として、我々の最新の研究成果について議論したい。具体的には、ヒト末梢⾎を⽤いたメタローム解析により、ASD 病態において変動する元素を同定した研究について、未発表データを交えて紹介する。その中でも、末梢⾎中の銅の減少は ASD 症状の臨床スコアと負の相関を⽰した。さらに、銅⽋乏状態を再現したモデルマウスでは、脳の発⽣異常が認められ、ASD 様⾏動を⽰した。これらの結果から、銅をはじめとする体内元素が脳の発⽣・発達に重要な役割を担い、その恒常性の破綻が ASD の病態形成に寄与する可能性が⽰唆された。